中大規模木造への第一歩! BUNGA総出で臨んだNCNの『木構造ガイドブック』完成

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 『木構造ガイドブック:WOODEN STRUCTURE GUIDEBOOK』の制作をOffice Bungaでお手伝いした。発行元は「SE構法」で知られるエヌ・シー・エヌだ。

全64ページ、A4版、オールカラー。デザインはキガミッツの森田恭行氏。エヌ・シー・エヌは希望者に無料配布している(写真:宮沢洋、特記を除き以下も)
 

中大規模木造で知りたいことが満載!

 近年増えつつある中大規模の木造建築。このガイドブックはその可能性や裾野をさらに広げることを目的にしている。目次は次の通りだ。

【Interview】中大規模木造では「分からないこと」をオープンに──原田真宏+原田麻魚/MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO
【Interview】つくり方をデザインする中大規模木造の醍醐味──桝田洋子/桃李舎
【Story】強靭な木造建築を実現するSE 構法。生みの親は、構造建築家の播繁さんでした
【Case Study】「中大規模木造」用途別10選
【New Phase】「エヌ・シー・エヌ」と「木構造デザイン」による大規模木造建築実現のための全力サポートとは?
【Q&A】中大規模木造が分かるQ&A 保存版
【Factory Report】そうだったのか! イラストで見る「プレカット工場」
【Construction Site】施工途中は木の塊! SE構法の現場に潜入

 中大規模木造のトップランナーとして巻頭に登場いただいた、マウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏氏と原田麻魚氏のインタビューから一部を紹介しよう。

インタビュー風景(写真:杵嶋宏樹)

麻魚 集成材などのエンジニアリングウッドや、製材でもJAS材ならば、「分かる木造」として設計できます。強度を含めた品質が数字で明示され、保証されているからです。その意味では鉄骨と似たところがあり、あとは接合部をどうするかを考えることになります。

真宏 木造でも中大規模になると、きちんと強度や性能が保証されたうえでつくる必要があります。エンジニアリングウッドは経験則ではなく、最後まで工学として解くことができます。小規模な在来工法を経験してきた設計者が、中大規模木造に取り組もうとするならば、「よく分からないけれど、経験則で成り立つ」という従来の在来木造のイメージをいったん捨てたほうがいいかもしれないですね。

 エヌ・シー・エヌが取り組んだ中大規模木造の最新事例を紹介するページでは、それぞれ何がポイントになったのかが理解しやすいと思う。

 また、本冊子の目玉である「中大規模木造が分かるQ&A」は、『こうすれば燃えにくい新しい木造建築』の共著がある松浦隆幸氏が構成・執筆を担当し、桜設計集団の安井昇氏に監修いただいた。設問は次の通り。この内容は保存版です!

そもそもどうして木造が注目されているの?/何でも木造にすればいいの?/「中大規模木造」ってどのくらいの規模?/普通の木材で大空間をつくれる?/中大規模木造の設計するコツは?/構造にはどんな木材を使う?/中大規模木造に「プレカット材」は使う?/構造設計者なら誰でも木造が分かる?/木造で検討すべき「防耐火要件」は何?/S造やRC造の耐火性能とどう違う?/満たすべき「耐火性能」はどう決める?/木造の「耐火建築物」はどうつくる?/耐火構造の木材を「現し」にできる?/「準耐火建築物」ってどういうもの?/ときどき耳にする「燃えしろ設計」って?/「防火区画」と「防火壁」はどう違う?/「内装制限」は中大規模木造にどう影響する?

 エヌ・シー・エヌは昨年、木造CAD/CAMシステム開発大手のネットイーグルとの共同出資により新会社「木構造デザイン」を設立。同社は中大規模木造建築に専門特化した構造設計事務所であると同時に、全国各地のプレカット工場のネットワーク化を進めている。中大規模木造の実現における現状の課題を解決し、「適材適所の木造化」を提案するためだ。

 エヌ・シー・エヌはこの『木構造ガイドブック』を無料配布している。希望者は同社の問い合わせフォームから連絡してほしい(「資料請求」にチェックを入れ、「木構造ガイドブック希望」と明記のこと)。

 『木構造ガイドブック』はOffice Bungaにとって初めて、磯・宮沢・長井の3人が総出で取り組んだ記念すべき仕事となった。宮沢は得意のイラストで表紙やプレカット工場ルポを担当。磯はSE構法の生みの親である構造家の故・播繁さんの逸話を執筆した。

 ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!(長井美暁)