日本設計が虎ノ門ヒルズに本社移転、見た目よりも「20世紀的均質さからの脱却」に納得

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 日本設計は、約50年拠点としていた西新宿から虎ノ門に本社を移した。新本社オフィスは、日本設計の設計、大林組の施工で2014年に完成した虎ノ門ヒルズ森タワー(地下5階・地上52階)の34階、35階。オフィスフロアの最上部だ。2022年11月から段階的に移転し、2023年1月11日より「本社」として全面スタートした。従来は固定席だったが、フリーアドレスとなった。

日本設計が本社を移した「虎ノ門ヒルズ森タワー」(写真:宮沢洋)

 その内覧会が2月28日にあり、見に行ってきた。こんな感じだ。撮影禁止だったので、オフィスア内はすべて広報用の写真である。

執務空間は「ミチ」を挟んで、窓際の「ソト」とコア寄りの「ウチ」の3部構成(提供:日本設計)
バイオフィリックエリア (提供:日本設計)
テラスエリア (提供:日本設計)
プロジェクトベース。セクションを超えたプロジェクトメンバーが一堂に会する場所 (提供:日本設計)
ナレッジコアと位置付けられた北側階段エリア (提供:日本設計)

「均質な環境からムラのある環境へ」

 写真で見ると、まるで最新オフィスインテリアの展示場のようだ。個々のインテリアがどうのというよりも、面白いのは室内環境の多様性だろう。内装が違うだけでなく、場所によって空調の方法が違ったり、明るさのルールが違ったりしている。案内してくれたオフィス移転チームの寺崎雅彦氏(インテグレイテッドデザイン室設計グループ主管)は「ムラ」という言葉を使う。

 なるほど、「ムラ」…。多様性よりも生っぽい。筆者もかつて会社勤めだったので、「温度ムラがある」とか「明るさにムラがある」とかは、ダメなオフィス環境を象徴する言葉であることを知っている。そのムラをできるだけなくそうとしてきたのが、20世紀の大規模オフィスビルの歴史だった。

 ただ、その過剰な均質さがエネルギー負荷を高めていることは、想像すればだれにでも分かる。地球環境のために「あえてムラのあるオフィス環境をつくる」という考え方は、10年以上前からあったそうだが、クライアントに提案してもほとんど実現することはなかった。だから、フリーアドレス化を契機に、自分たちのオフィスでやってみたのだという。

 現在、AIを使って「あなたにお勧めの場所」をお知らせするアプリを開発中という。単なる分析型だと同じような場所をお勧めしてしまうので、ランダムさを取り入れて候補を示す。これは半年先の運用開始を目指している。

左が寺崎雅彦・インテグレイテッドデザイン室設計グループ主管、右は成田治・常務執行役員プロジェクト管理担当 インテグレイテッドデザイン部長。成田氏は、 虎ノ門ヒルズ森タワーの設計にも関わった(写真:宮沢洋)

 新本社で働くのは約1000人で、約6割の在籍率を想定し、通常業務用の机は約600席とした。個人の荷物は、1人に1つ小さな物入れがあるだけという。えーっ、信じられない! やっぱり仕事のできる人たちは断捨離もできる! …と、机2つ分が資料で占領された中でこの原稿を書いている筆者は思うのであった。これも1つの「ムラ」だと開き直りながら。(宮沢洋)