越境配信:NTT出版の新ウェブメディア『DISTANCE.media』がスタート、「磯崎新特集」に宮沢・磯が協力

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 6月26日、NTT出版が運営する新たなウェブメディア『DISTANCE.media(ディスタンスドットメディア)』がスタートした。NTT出版はかつて、『InterCommunication』という季刊の情報誌を発行していた(1992~2008年)。それから10年以上がたち、満を持して同社らしいウェブメディアをスタートさせた。オープニングの2つの特集のうちの1つ、「磯崎新から遠く離れて」に筆者(宮沢洋)と磯達雄が協力している。大変光栄である。(ちなみにもう1つの特集は「DISTANCE 新しい距離を考える」)

 2人が執筆したのは磯崎新特集の「Part1 10のキーワードで知るイソザキ」というパート。磯が10のキーワード解説を執筆し、宮沢がそれぞれのイメージイラストを描いた。当該記事はこちらから無料で読める。

キーワード1「九州」のイラスト。キーワードは、2.丹下健三研究室/3.社交/4.廃墟/5.万博/6キュレーション/7ポストモダン/8本/9ジェンダー/10群島 ユートピアと続く(イラスト:宮沢洋)

 なぜサイト名が『DISTANCE』なのか。以下の創設主旨(太字部)を読むと、なるほどと思う。

 2023年6月、NTT 出版は新しいウェブメディア『DISTANCE.media』を立ち上げます。

 distance:距離、道のり、間隔、かなりの距離、遠方、隔たり、経過、広がり、(血縁・身分などの)相違、懸隔(Weblio辞書)インターネットの普及からおよそ 30 年になります。その間、人類は国境を越えより密につながることを求めて、さまざまなイノベーションを生み出し、空間的・時間的距離を克服してきました。当初、思い描いてきたのは、人々が国家や共同体から解放されて、一つの地球というイメージを共有する個(私 [i])として、世界中の人びとと自由に手を携えるという、楽観的なビジョンでした。

 しかしながら、私たちを一つに結びつけると期待されていたインターネットは、現在、様々な分断と亀裂をもたらす要因となっています。スマートフォンなどを通じて、人々のメディアへの接触時間は増大を続け、フィルターバブルやフェイクニュースなど、「つながりすぎた」ことによる様々な問題が広がっています。人々の未来はアルゴリズムによってあらかじめ予測され、近くの見たいものばかりが目に入りやすい環境が、急速に作りあげられています。

 そうしたなかで生じたパンデミックにより、私たちは身体的な接触を制限されることになりました。物理的なつながりの代わりに、インターネットが人々をより密に結びつけることが期待されましたが、実際には、すでに社会に生じていた亀裂をより露わにしたように思います。

 私たちは、そうした現在の状況において、「つながり」をいったん問い直し、遠くを見る必要があると考えました。私たちが提案するのは、遠く(他者・自然・歴史・宇宙)に思いを馳せ、人間だけの視点に立たないエコロジカルな視点から私たちの営みを問い直す場をつくることです。また遠くを見ることによって、そことの距離によって、近くを新たなまなざしで見ることができるのではないかと考えております。

 アートとサイエンス、デザインとテクノロジーといったトピックを、人類史・環境史的なパースペクティブのなかで捉えながら、未来と過去を見晴らせる、ゆるやかに開かれた場をめざして、『DISTANCE.media』はスタートします。

Concept:
遠くを見るメディア「DISTANCE.media」
長く、ゆっくり、遠くまで Long, Slow, Distant
海のはるか向こうに、視線を飛ばすように、
焚火を囲みながら、薪をくべるように、
静かに、親密に、ことばを置くことをめざして……

Target:
思想、芸術、文学、科学、技術、政治、経済、社会問題などに幅広い関心をもつ若者、知識層、研究者など

Program Design:
山本貴光(文筆家・ゲーム作家/東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授)
ドミニク・チェン(情報学研究者・起業家/早稲田大学文学学術院教授)
塚田有那(編集者・キュレーター/一般社団法人 Whole Universe 代表理事)

Web Design:
田中良治(セミトランスペアレント・デザイン/武蔵野美術大学基礎デザイン学科教授)

運営・責任:NTT 出版

Media domain:https://distance.media

 「つながり」をいったん問い直し、遠くを見る必要がある──。そう、確かに。BUNGA NETもこの視点、大切にしたい。筆者(宮沢)は、紙メディアが大好きだったのだが、WEBには紙メディアにはないメリットもあって、その1つがサイト同士がつながって「遠くの情報までつながれること」だと思っている。近いどころだけで完結しないつながり方を『DISTANCE.media』さん、一緒に考えていきましょう!(宮沢洋)