「築50年でOK」「大胆リノベも可」、太陽の塔など登録文化財へ

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 新型コロナウイルス拡大の喧騒のなか、「太陽の塔」が登録有形文化財に内定したことが小さく報じられた。国の文化審議会は3月19日、1970年大阪万博のシンボルである「太陽の塔」(大阪府吹田市)のほか、「旧倉敷市庁舎(現・倉敷市美術館)」、「京都市美術館本館(現・京都市京セラ美術館)」など133件の建造物を登録有形文化財にするよう、文部科学大臣に答申した。夏ごろまでに登録される見込みだ。

「ぴったり50年目」で登録

 133の中から「太陽の塔」、「旧倉敷市庁舎」(下の写真)、「京都市美術館本館」の3つを挙げたのには理由がある。それらが選ばれたことで、「建造物」部門の登録有形文化財の対象範囲(文化審議会の判断基準)が明確になったからだ。

 そもそも登録有形文化財という制度を知らない人もいるかもしれない。ざっくり言うと、国指定重要文化財の予備軍を育てる制度だ。所有者が「登録希望」を提出、それを国が審査して登録し、登録されたものは修繕工事や耐震工事の一部を助成する。ハードルの高すぎる国指定重要文化財を補完する制度として、1996年に創設された。

 今回の答申で注目すべき点の1つは、太陽の塔が「ぴったり50年目」の登録であることだ。

 登録の対象となる築年数が「原則として建設後50年を経過したもの」であることは、文化庁の資料にも書いてあるが、一般の人はもちろん、地方自治体の人にもほとんど知られてない。なぜそう言い切るかというと、「建築巡礼」の取材で地方に行き、「もうすぐ登録文化財に申請できますね」というと、「え、そうなんですか!」と驚かれることがよくあるからだ。

 これまで登録された「誰もが知る」建造物で言うと、1954年竣工の名古屋テレビ塔が登録されたのは2005年なので築後51年、1956年竣工の通天閣(2代目)は2007年登録なので築後51年、1958年竣工の東京タワーは2012年登録なので築後54年だ。太陽の塔が今年、「70年万博から50年」であることは、誰にも分かりやすく、インパクトもある。

倉敷市庁舎、京都市美術館も大改修を経験

 そして、もう1つの注目点は、先に挙げた3件がいずれも「原形のまま」ではないこと。「大胆に変える」ことで新たな命を吹き込んできた。

 太陽の塔は、岡本太郎と集団制作建築事務所の設計で完成した当初、「仮設」の扱いだった。これを恒久施設とすべく、昭和設計の設計で2018〜19年に耐震改修を実施。その際、軽量化の一環として当初のエスカレーターを階段に変えることで一般公開が可能となった。

 1960年に丹下健三の設計で完成した旧倉敷市庁舎は、浦辺鎮太郎の改修設計で1983年に美術館に生まれ変わった。庁舎コンバージョンの先駆けだ。

 前田健二郎と京都市営繕課の設計で1933年に完成した京都市美術館は、このほど青木淳・西澤徹夫設計JVによる改修が完了し、「京都市京セラ美術館」として4月11日にオープンする予定だ。外観のぱっと見は変わらないが、建物正面の地下を掘って地下から館内に入る動線に改めるなど、内部は大きく変わっている。

 やはりこれについても、地方に取材に行くと、「文化財にするためには原形に全く手を入れてはいけない」と思っている人が多い。

 コロナの話題でほかのすべてがかすみがちだが、長い目で見ればインバウンド増加・景気回復につながるニュースとして特記しておきたい。(宮沢洋)