日曜コラム洋々亭11:長野県がプロポーザル審査をオンライン配信、第2弾の「御嶽山センター」は本日Youtubeで!>>当選はyHa architects

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「御嶽山ビジターセンター(仮称)整備事業設計プロポ一ザル」の最適候補者にはyHa architects(福岡県)が選ばれた。次点は千葉学建築計画事務所。7月26日(日)18時45分ごろ発表された。以下の記事は2次審査の前に公開したもの。

 日曜コラムを始めてよかったなと思うのは、土日を狙った行事がけっこう多く、記事の内容はそこそこながらもニュース性の高さで「意外に読まれる」ということである。皆さん、今日もクリックしていただき、ありがとうございます。

 今日は、本日7月26日(日)12時15分に“配信開始”予定の「御嶽山ビジターセンター(仮称)整備事業設計プロポ一ザル」の2次審査について書きたい。

 その前に、おととい、7月24日(金)の話題から。長野県はこの日の午後1時から「松本平広域公園陸上競技場整備事業基本設計」の公募型プロポーザルの2次審査を一般公開で実施し、午後4時30分ごろ、青木淳建築計画事務所・昭和設計JVを最適候補者に選んだ。

 私(宮沢)はこの様子を日経アーキテクチュアの依頼で現地取材し、その記事はすでに昨日(7月25日)、公開されている。たぶん、この段階ではどこにも負けない詳しさなので、ぜひ読んでほしい。

参考記事:勝者は槇、仙田、青木?松本平陸上競技場プロポの二次選考を長野県が一般公開(日経クロステック2020年7月25日公開)

 各案の詳細についてはとても参考になる記事だと思うが、審査のやりとりや結果については、「そんなのリアルタイムで知っている」という人もいるはずだ。なぜなら、この2次審査の様子は、長野県がYoutubeでオンライン配信していたからだ(冒頭の画像はそのキャプチャー)。なんて、記者泣かせの時代…。

ようやくやってきた完全生公開時代

 でも、それは大変素晴らしいことだと思う。私が日経アーキテクチュアに配属されて間もないペーペーの頃は、文系出身で技術的なことがよく分からないこともあって(今はそれなりに分かりますよ)、頻繁にコンペの取材担当になった。そのたびに、今は亡きコンペ史の大御所、近江栄先生(1925~2005年)にコメントを求めに、日本大学に通ったものである。

 近江先生は「公平、公正、透明」とよく言っていた。なかでも、「透明」が「公平、公正」を担保するうえで重要だというようなことをおっしゃっていたと思う(私の記憶では)。

 審査の透明化という意味で、大きな話題になったのは「せんだいメディアテーク」の公開コンペ(1995年)だ。このとき、審査会(委員長:磯崎新氏)の一部が、一般市民の集まる別室のテレビモニターに中継された。せんだいメディアテークのウェブサイトにはこんな記録が残されている。

 「審査委員がそれぞれ優秀3作品についての意見を述べた上で投票を行い、優秀3作品が選出された。この模様は、別室に用意したテレビモニターを通じて一般市民に中継公開された。中継会場には、解説者として早稲田大学教授・石山修武氏らが入り、審査の進行にあわせて逐次解説を行った。審査会場の厳粛さと応募者を含む200の市民がつめかけた中継会場での異様な熱気はまさに好対照であった」

 それから30年近く。「別室のテレビモニター」などという小さな話ではなく、設計競技の審査会は、全世界にリアルタイムで配信されるようになったのだ。天国の近江先生も涙していることだろう。今回、審査を全公開した松本平プロポーザルの審査委員長が、せんだいメディアテークで涙を飲んだ古谷誠章氏であることも感慨深い。古谷氏は日本建築学会長時代(2017~2018年)に、コンペの適正化に力を入れてきた。今回は審査委員長として、その実践である。磯崎氏のバトンは引き継がれた。

1日空けて再びYoutube中継

 で、今日の審査会。「松本平」の審査会からわずか2日後に、また長野県で別の審査会があるのである。そしてこれもYoutubeでオンライン配信される。対象は「御嶽山ビジターセンター(仮称)整備事業設計プロポーザル」。主催者は長野県と木曽町だ。

 御嶽山と漢字で書くとピンとこないが、「おんたけさん」である。2014年9月27日に噴火し、死者58人・行方不明者5人という戦後最悪の火山災害となった。この教訓を踏まえ、長野県と木曽町がビジターセンターをそれぞれ建設する。両施設の総称が「御嶽山ビジターセンター(仮称)」だ。県のビジターセンターは、延べ面積約500m2、予定工事費約3億5000万円。木曽町のビジターセンターは延べ面積約500m2、予定工事費約3億2000万円。

 設計者選定は公募型プロポーザルを採用。2020年7月10日に1次選考が実施され、提案書提出者92者の中から、6者が2次選考に進んだ。

〔2次審査参加者〕※受付順
・ikmo(東京都)
・マル・アーキテクチャ(東京都)
・yHa architects(福岡県)
・遠藤克彦建築研究所(東京都)
・千葉学建築計画事務所(東京都)
・キノアーキテクツ(東京都)

〔審査委員会〕
宮崎浩(審査委員長、プランツアソシエイツ代表)、出澤潔(長野県建築士会名誉会長)、小泉雅生(小泉アトリエパートナー、東京都立大学教授)、中島慶二(江戸川大学国立公園研究所所長、戸田知佐(オンサイト計画設計事務所取締役パートナー)

 2次審査は長野市生涯学習センターで7月26日12時30分から行われ、Youtubeチャンネルにてライブ配信される予定だ

〔Youtubeチャンネル名:長野県建設部施設課〕(7月26日12時15分配信開始
https://www.youtube.com/channel/UCEnskGvSEJOPFIWdAjYeEbA

 今回は、最終の議論と投票の様子は公開されない見込みだが、それでも先進的な取り組みだ。

 さて、今回は取材ではないので、コーヒーでも飲みながら、ゆったり審査会を見ることにしよう。そんなことを書いていたら、土曜日に『みんなの建築コンペ論』(山本想太郎、倉方俊輔共著)という新刊が届いた。ちょうどいいので、この本をパラパラめくりながらYoutube審査会を見ることにしたい。(宮沢 洋)