「52間の縁側」三冠で注目度増す? “新風”「みんなの建築大賞」の独自性 

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 本日(4月21日)の朝日新聞文化面をご覧いただいただろうか。筆者(宮沢)が事務局を務めた第1回「みんなの建築大賞」についてかなり大きな記事が掲載されている。全国紙に最新の建築ニュース(悪い話ではないもの)がこれほど大きく取り上げられるのは珍しい。見出しは「『みんなの建築大賞』吹くか新風」「誰でも『いいね』で投票、参考は本屋大賞」だ。

 執筆者は建築界隈ではよく知られる大西若人編集委員(東京大学都市工学科卒!)。同業の筆者も感心する内容のぎゅっと詰まった記事(見出しを見ただけでもそれは分かる)で、普段、新聞を読まない人もぜひコンビニなどで買って読んでみてほしい。(朝日新聞の会員の方はデジタル版でも→https://www.asahi.com/articles/DA3S15917047.html

 筆者は記事の見出しにある「吹くか新風」というフレーズがとても気に入っている。関係者はまさにそんな思いでこの賞の創設に取り組んだからだ。

 現在、発売中の『Casa BRUTUS』5月号でも、この賞を1ページを割いて取り上げてくれた。

 これはWEBでも読める。

建築界の「本屋大賞」⁉︎ みんなの建築大賞とは?

 『Casa BRUTUS』の記事では、「業界だけの話題に留まり、一般に知られる機会がほとんどなかった従来の賞の形では、正直もったいない」という筆者のコメントが使われている。

新風の原動力は推し活の熱量

 くしくも先週金曜(4月19日)、日本建築学会賞の各賞が発表された。作品部門(作品賞)には、「House&Restaurant」(石上純也建築設計事務所)、「岩国のアトリエ」(向山徹建築設計事務所)、「52間の縁側」(山﨑健太郎デザインワークショップ)の3件が選ばれた。

 「52間の縁側」↑は、グッドデザイン賞大賞、JIA日本建築大賞に続き、大きな賞の三冠達成となった。グッドデザイン賞は「建築」に限定された賞ではないので置いておくとして、日本建築学会賞とJIA日本建築大賞は間違いなくダブル受賞すると筆者は思っていた。筆者はJIA日本建築大賞の審査員の1人だったので、現地を見た建築関係者(どちらの賞も現地審査がある)で議論したらこれに賞を与えないことは考えにくいと思った。客観的に見て建築史の一つのエポックとなる建築だろう。自分が推薦する3件の中にもこれを挙げた。

 「52間の縁側」は、「みんなの建築大賞」の候補10作「この建築がすごいベスト10」にも選ばれた。筆者の関心は、「52間の縁側」が「みんなの建築大賞」を含めて“四冠達成”となるかだった。正直に言うと、「四冠達成」と言われることで、「みんなの建築大賞」の認知度が上がるのではないかと思ったのである。(そんな邪なことを考えていたのは、推薦委員の中でも私だけだと思う)

 が、Xの一般投票では1位にならなかった。裏方の人間が「取らせたい」と思っても誘導できるものではないのがこの賞の面白さである。すでに報じているように、「みんなの建築大賞」はVUILDが設計した「学ぶ、学び舎」が取った。

 写真映えする建築が有利とか、SNS に親和性のある世代に響く建築が有利とか、そういう声も聞かれる。確かにそうかもしれない。

 それについて、先の朝日新聞の記事は、3つ目の見出しにこう書いている。

「客観性・公平性より熱量 『推し活』に期待」

 さすが、大西さん、うまいことを言う。そう、この賞は“最新建築の推し活”なのだ。朝日新聞の記事は「『自分の好きな建築を推す取り組みが、建築を愛して長く使うことにつながれば』という設立の思いにつながってゆくのかどうか」と結ばれており、これもその通りで付け足すことがない。

 現在、第2回の開催要項発表に向けて準備中。より多くの人が参加できるようにしたいと考えているので、引き続きご注目いただきたい。(宮沢洋)

※そもそも「みんなの建築大賞」を初めて知った、という方はこちらの記事を→https://bunganet.tokyo/award05/