自腹で評価、「北海道ボールパークFビレッジ」はオフシーズンでも本当に楽しめるか?

Pocket

 今年の話題作は今年のうちに、ということで、北海道北広島市の「北海道ボールパークFビレッジ」を見てきた。野球ファンには、施設の核となる球場名「エスコンフィールドHOKKAIDO」の方が伝わりやすいだろうか。球場の公式サイトを開くと、「オフシーズンも楽しめる!!エスコンフィールド」というキャッチコピーがまず目に飛び込んでくる。

まず驚いたのは、このガラスカーテンウオールの美しさ。「これは大味な建築ではないぞ」という期待を抱かせる(宮沢洋)
敷地面積約32万m2、総工費約600億円

 オープンしたのは2023年春。ずっと行きたかった。建設途中の現場をリポートし、その斬新さを知っていたからだ。

 だが、あえてすぐには行かなかった。野球シーズンが終わるのを待った。言い訳に聞こえるかもしれないが、「野球がない時期にも本当に楽しめるのか」「シーズンオフに人が来ているのか」を確認したかったからだ。

 最寄り駅は、新千歳空港と札幌の中間あたりにある北広島駅。「世界がまだ見ぬボールパーク」のキャッチコピーを掲げ、計画が進められた。設計は大林組とHKS(米国)の共同設計。HKSは米国の大手設計事務所の1つで、AT&Tスタジアムなど大規模競技施設の設計で知られる。施工は大林・岩田地崎特定建設工事共同企業体だ。PM・CMを山下PMCが担当した。同社は、着工の約3年前、2017年夏の候補地検討段階から参画している。

いざスタジアム内へ

ファイターズガールの案内でスタジアムツアーへ

 1800円を払って、スタジアムツアー(ベーシックツアー)に参加した。「ファイターズガール」が1時間、見どころや裏方を案内してくれる。

 ファイターズガールは「きつねダンス」で旋風を巻き起こしたチアチームの女性たちだ。1800円のベーシックツアーの他に3500円のプレミアムツアーというものもあるが、ベーシックツアーでも十分、楽しめた。映画1本見ると考えれば、これはお得。せっかく行くなら、ケチらずにツアーに参加することを薦める。(土日祝日のベーシックツアーは2300円)

ぐるっと回りたくなる回遊型コンコース

 公式サイトの説明(太字部)を読みながら、ツアーで撮った写真(一部はツアー後に撮影)を振り返ろう。

ES CON FIELD HOKKAIDOは、敷地面積5ha、収容人数は3万5000人。掘り込み式フィールドから地上4階まで観客エリアが広がります。

屋根が開くとこうなる。開閉にかかる時間は約25分。1回動かすのに要する電気代は約3万円とのこと。意外に安い

周辺環境との調和を第一に考え、建物中層部にテラスを複数造るなど、地域に溶け込むデザインを採用しています。細部にまでこだわった新球場は、日本初の開閉式屋根付き天然芝球場。芝の育成を促すため南側は一面のガラス壁に。みずみずしい草の香りや色鮮やかなグリーンを目にすることで、観戦する側もまた癒されます。五感で心地よさを感じることができる、プレイヤーファーストとファンファーストの両立を目指す球場です。

右手の照明装置は、屋根を閉じている冬季に芝を育成するためのもの

360度回遊型のコンコース
球場内はバリアフリー。広いコンコースは360度回遊型でフィールドビューが途切れることなく、歩いているだけで楽しいスペースに。

世界最大級の大型ビジョン
世界最大級の大型ビジョンを一塁側と三塁側の各スタンド上に2台設置。最新鋭の映像と音響による演出で球場全体を盛り上げます。

手が届きそうな最前列
選手のプレーを間近に見られるフィールドレベルの客席は、一塁・三塁側の2カ所に。臨場感あふれる観戦に加え、ビュッフェスタイルのレストランなど、コンコースとはまた一味違ったグルメを好みのスタイルで堪能できます。

フィールドが一望できるブルワリーレストラン
センターバックスクリーンに“世界初のフィールドが一望できるクラフトビール醸造レストラン”「そらとしば by よなよなエール」を開業。1階はオリジナルクラフトビールの醸造・提供。2階は屋根がない開放的なルーフトップスペースで、フィールド全体を一望しながら、球場内で醸造された球場内限定のオリジナルクラフトビールを堪能いただけます。通年利用できるエリアです。

日本最大級の遊び場
全国で数多くの遊具施設を展開するボーネルンドと共に、球場内・外に、幅広い年齢の子どもたちが安心・安全に楽しめるようゾーン別に区分した日本最大級のあそび場「リポビタンキッズ PLAYLOT by ボーネルンド」を展開。

通年で楽しめる「TOWER 11」
レフト側の5階層ビルは、これまでの球場にはない既成概念を打ち破る配置と外観で、新球場のランドマークに。ファイターズの歴史において「既成概念の打破、革新性、先進性」を体現し、今も更なる成長を遂げながらグローバルに活躍しているダルビッシュ有選手、大谷翔平選手に対する敬意を表し、過去ファイターズで背負った背番号「11」から「TOWER 11」と命名。通年利用できるエリアです。

3塁側の客席を1塁側よりも減らして、「TOWER 11」(写真中央のタワー)をつくった、上部が温泉施設

温泉から球場を一望する異体験

 ここからはツアーを離れ、「TOWER 11」の温泉施設「tower eleven onsen & sauna(タワー・イレブン・オンセンアンドサウナ)」へ。風呂好きの筆者の最終目的はここだ。

フィールドを一望できる球場内天然温泉とサウナ”は世界初。半屋外の水着着用ゾーンには、フィールドを見下ろす24席の“ととのえテラスシート”があり、サウナ室や浴槽からも試合を見ることができるエンターテイメント性あふれる温浴施設。

水着エリア
サウナ(水着着用)

屋内バーゾーンには球場内醸造のオリジナルクラフトビール、各種ドリンクや軽飲食を楽しめる空間を完備しています。

  温泉は2500円とやや高めの設定だが(試合開催日は4000円~)、これも「話の種」と考えれば十分元がとれる。筆者はうっかり水着を忘れてしまったため、レンタル水着代1000円が追加でかかった。それでも、やっぱり水着ゾーンは体験してよかった。

 冒頭の問いに戻ると、「野球がない時期にも本当に楽しめるのか」⇒想像以上に楽しめた。球場内を見るだけならばタダで入れるが、やはりお金を払ってスタジアムツアーや温泉施設を利用すると満足度が増す。

 「シーズンオフにも人が来ているのか」⇒正確な人数は分からないが、平日でもかなりの人が来ていた。30分ごとに出発するスタジアムツアーもは大繁盛に見えた。

野球観戦以外の来場者が100万人超え

 古巣の「日経クロステック/日経アーキテクチュア」の記事によると、プレオープンした2023年3月12日からファイターズ本拠地最終戦後の23年9月30日までの来場者数は203日間で約303万人。開業当初に目標としていた「年間300万人」を約半年間で達成したという。野球を観戦していない来場者数は全体の33%に当たる約101万人だった。

 Fビレッジを運営するファイターズスポーツ&エンターテイメント(北広島市)は、野球観戦以外を目的とする来場者数についても、「想定を大きく上回った」とする。また、2023年12月期の営業利益を2019年比174%増の26億円と予想している。※経営情報に関する元記事はこちら→「日本ハム新球場」驚異の1年目決算、300万人達成の先に描く成長ビジョン(日経クロステック/日経アーキテクチュア2023年12月1日)

 結論を言うと、それほど野球好きでない筆者でも1日楽しめた。経営好調もうなづける。ただ、筆者は「一度見て大満足」と感じでしまった。ファン以外をどうやってリピートさせるかが今後の課題だろう。(宮沢洋)