新生『ディテール』(彰国社)で「名手のメソッド」が連載化、実は「勝手に誌面批評」から始まった縁

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 「この建築はディテールが魅力的だ」「実にあの人らしいディテールだ」。人がそう思うとき、脳は何をもって判断しているのか。そんな超・基本的なことをイラストで考察してみた――。

 そんな前振りで始まる宮沢の1人企画「イラストでわかるディテール名手のメソッド」が『ディテール』誌の「特集」として掲載されたのは2021年春のこと。それから2年。物議を醸しそうでヒヤヒヤなあの企画が、「連載」となって帰ってきた。

 ディテール2023年7月号(237号)である。編集長が山根一彦さんから前田智成さんに代わり、誌面デザインも刷新された。その新生・ディテールの巻末8ページを連載「ディテール名手のメソッド」が飾る。やっぱり私の連載は、雑誌の後ろにあるのが座りがいい。「幻想的(非現実)」というテーマで、藤本壮介、石上純也、青木淳の3氏を取り上げた。

ディテール2023年7月号の表紙。特集は「木の屋根架構」。詳細はこちら

 誌面刷新は、デザイン事務所「neucitora(ネウシトラ)」を主宰する刈谷悠三さんが担当した。

 刈谷さんは大阪工業大学工学部建築学科→ 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻というすごいプロフィルのグラフィックデザイナー。建築関係の仕事も多いので、皆さんも知らぬ間に目にしていると思う。例えば、この「BUNGA NET」のロゴもneucitoraによるものだ。

Designed by neucitora
今回の連載の扉ページ

 
 今回の連載では、まず、扉のデザインが知的かつ大胆で、実に刈谷さんらしい。宮沢のイラスト(横姿)は、原画の10倍くらいに拡大されている。

 2色刷りの特色も、私は前回のような青系を想定していたのだが、全く予想外の黄色! でも、こんなビビットな色はこの連載でしか使えないので、次はどんな色になるのかしらと楽しみになる(毎回変わるらしい)。

前回の特集のプロローグのページ。内田祥哉先生が似顔絵を褒めていたらしい。ディテール2021年4月号はこちら

 ちなみに、前回の特集は雑誌の序盤に32ページだった。今、見返してもひえーっと汗が出るボリュームと顔ぶれ。取り上げたのは14人だ。

〈軽さ・薄さ〉村野藤吾/隈研吾/菊竹清訓/原広司
〈空間認識〉坂倉準三/磯崎新/谷口吉生/前川國男
〈光と影〉山田守/伊東豊雄/内藤廣
〈物質感〉藤森照信/坂茂/吉阪隆正

 

本サイトの「建築系雑誌読み比べ!」から始まった縁

 ところで、前回の特集は、前編集長の山根さんから声をかけられ、私が提案したものだ。なぜ声をかけられたかというと、本サイトの「建築系雑誌読み比べ!」という企画で『ディテール』の誌面レビューを書いたからだ。許可なく、勝手に…。2020年春、コロナ禍が始まってどこにも行けなかったときの“苦肉の企画”だ。山根前編集長は、それを読んで私に興味を持ってくれたらしい(こちらの記事)。人生、何がどうつながるか分からない。

「建築系雑誌読み比べ!」 の挿し絵

 
 彰国社は2色刷りのクリエーションが素晴らしい、ということを熱く書いている。今回の連載はたぶん2年(8回)くらい続くと思うので、皆さんがかつて見たことのない2色刷りをお届けできるように頑張りたい。色指定するのは私ではなく、刈谷さんなのだけれど。(宮沢洋)