平田晃久氏の設計では7つ目、「ナインアワーズ半蔵門」が7月1日にオープン

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 平田晃久建築設計事務所が基本設計を手掛けたカプセルホテル「ナインアワーズ半蔵門」が7月1日にオープンした。「ナインアワーズ」としては15店舗目、平田氏の設計では7店舗目となる。

(写真:長井美暁、以下も)

 平田氏は2018年開業の「ナインアワーズ大手町(旧・竹橋)」を皮切りに、これまでに赤坂、浅草、新大阪、水道橋、浜松町で同ホテルの設計を手掛けてきた。いずれも都市に対して開かれたデザインで、立地の特徴を建物の内外に取り込み、宿泊客がホテルの立つ場所や周辺環境を感じられるようにしている。

街路樹が立体化したようなファサードで、都市と呼応する

 今回の「ナインアワーズ半蔵門」が立つのは千代田区麹町。オフィス街で、敷地の周辺にはガラスカーテンウオールのビルが立ち並ぶ。一方、麹町一帯には街路樹の計画が張り巡らされており、それが皇居の緑につながる。

 平田氏はそうした周辺環境から、ミラーガラスと1.2mグリッドのサッシでファサードをつくり、そこにピクセル状に「アウターニッチ」を刳り貫き、樹木を嵌め込んだ。1.2mはカプセルのモジュールだという。

 皇居から続く街路樹が立体的に連続するような正面ファサードは、ミラーガラスに周辺環境や樹木が映し出され、街のなかの緑が増幅する。奇数階に高木を設置していて、それぞれ樹種が違う。

 エントランスにも高木を植えている。植栽に関しては、ガーデンプランナーで温室代表の塚田有一氏とコラボレーションし、相談しながら種類や配置を決めた。

 入ってすぐの場所はワークスペース。中央の黒いものはベンチで、この上でスーツケースを広げられるように固めの素材でできている。

 ナインアワーズ半蔵門は、大手町(旧・竹橋)と同じようにランニングステーションを設置し、皇居ランナーに向けて、シューズロッカーやウェア・シューズ等を貸し出す。ベンチ上に展示してあるのは、ナイキとのコラボレーションにより無料で貸し出す最新モデルのシューズだ。

 建物は地上10階建て。2階と3階にロッカー・洗面・シャワーのフロアがあり、2階と8〜10階が女性用、3階と4〜7階が男性用だ。客室数は男性100室、女性80室。

 上の写真は9階。エレベーターを下りて、ドアを開けると目にする風景だ。窓から外光がふんだんに入って明るい。

 各階とも窓際は、余裕のある空間にしている。一部の階には「インナーニッチ」と呼ぶスペースがある。内部でも緑が感じられるようにと、前面のカーテンウオールを支える下地に細い部材を架け渡して設けたスペースで、茶室の床の間や違い棚を意識したという。浮遊感があるように緑を飾っている。

 こちらは10階。ナインアワーズはカプセルを上下互い違いに配置するのが特徴で、今回はそれをデザインとして、端部の凸凹をそのまま見せている。

 小さなカプセル空間から、景色が見える窓際に向かって広がり、窓の外の都市へとつながっていくことを意識してカプセルを配置している。

カプセル内部をUV照射で毎日除菌

 写真はウイルス対策として、カプセル内部の除菌に用いるUV照射器だ。UV-C紫外線ランプ40Wを2本用いた同社のお手製で、全店舗に常備する。

 ナインアワーズはコロナ禍により約2カ月に渡って臨時休業していたが、7月1日から全店舗の営業を再開した。再開にあたり、独自の衛生対策として「9hハイジーン(包括的な衛生管理)プロジェクト」を立ち上げた。その1つがカプセル内のUV照射で、毎日の清掃時に、すべてのカプセルに対して行う。

 UV照射はカプセル入り口のロールスクリーンを下ろした状態で行う。清掃スタッフはこの保護ゴーグルを着用する。

 こちらは2階の女性用ロッカー・洗面・シャワースペース。窓際にロールスクリーンを取り付ける前の様子だ。

 洗面エリアは鏡張り。

 「9hハイジーンプロジェクト」の一貫で、手指消毒のためのエタノールを洗面台をはじめ随所に設置。ハンドソープも見直し、除菌効果の高いものに変えた。

 ナインアワーズでは、同プロジェクトは宿泊客にも参加してもらうことで完成するとし、宿泊客にチェックイン時の検温、館内でのマスク着用、こまめな手洗い、エタノールによる手指消毒などを求めていく。(長井美暁)