6月19日に筆者(宮沢洋)の新刊『はじめてのヘリテージ建築~絵で読む「生きた名建築」の魅力』が発売になった。これに合わせて、同書の協力者である日建設計の東京ビル(飯田橋)にて、同日からイラストの原画展が始まった。
まずは書籍の紹介から。アマゾンなどの内容紹介にはこう書かれている。
『はじめてのヘリテージ建築~絵で読む「生きた名建築」の魅力』
「古さ」を楽しむ人が増え、再評価が高まる「ヘリテージ建築(歴史遺産建築)」。なかには建築設計者の手で保存再生され、魅力的な場に生まれ変わったものがあります。元建築雑誌編集長が現地を巡り、分かりやすいイラストを交えながらその面白さを伝えます。
Part1 変化を楽しむ
01中部電力MIRAI TOWER(名古屋テレビ塔)/1954年完成
02茨城県立図書館/1970年完成
03国立西洋美術館本館と前庭/1959年完成
04東京メトロ銀座駅/1934年完成
05京都市役所本庁舎/1931年完成
06新宿住友ビル三角広場/1974年完成(新宿住友ビル)
07秋田市文化創造館/1966年完成
Part2 物語に出会う
08米子市公会堂/1958年完成
09原爆ドーム/1915年完成
10有楽苑と如庵/1972年完成
11無鄰菴(むりんあん)/1896年完成
12函館ハリストス正教会/1916年完成
13日本製鉄九州製鉄所/1899年他完成
14神戸栄光教会/2004年完成
Part3 グルメを楽しむ
15中之島図書館/1904年完成(第1期)
16八勝館(はっしょうかん)/1950年完成(御幸の間)
17国立国会図書館 国際子ども図書館/1906年完成(帝国図書館)
18THE HIRAMATSU 京都/2020年完成
19宝塚ホテル/2020年完成
20元離宮二条城/1603年他完成
建築好きトーク「ヘリテージ建築の楽しみ方&私のお薦め教えます!」
甲斐みのり(文筆家、『名建築で昼食を』原作者)×山名善之(建築史家)
BUNGA NETをよくご覧になっている方は分かるだろう。これは日建設計noteで約2年間連載した「イラスト名建築ぶらり旅 with 宮沢洋&ヘリテージビジネスラボ」を書籍化したものだ。20本のイラスト付きリポートを、「変化を楽しむ」「物語に出会う」「グルメを楽しむ」の3章に分けて再構成した。1ページにイラスト1枚ずつのゆったりした構成(しかもオールカラー!)なので、本文を読まなくても絵だけで大体のストーリーが分かる。
アクリル越しに緑が見え、屋外展示のよう
そして、日建設計での原画展。こちらの正しい名称は、書籍名ではなく連載名の「イラスト名建築ぶらり旅原画展」。展示しているのは、書籍に収録した20件すべての原画だ(枚数でいうと60枚)。
以下は日建設計のリリースより。
株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松敦)は、日建グループのnote(WEBメディア)で連載中の「イラスト名建築ぶらり旅」の書籍化を記念して、画文家・宮沢洋氏の描くイラスト原画展を開催いたします。
「イラスト名建築ぶらり旅原画展」開催概要
■会期:2023年6月19日(月)~7月14日(金)(土日祝日休館)
■時間:9:10~17:00
■会場:日建設計 東京ビル1Fギャラリー・2階展示スペース(東京都千代区田飯田橋2-18-3)
これまで日本の近現代の歴史的建物は、スクラップ&ビルドにより、まったく新しい効率的な建物へと更新される傾向にありました。何故なら、こうした建物は、現在の建物に比べ、快適性や耐震性が劣り、劣化に対する維持保全が必要であり、持ち主にとっては「お荷物」的存在と考えられてきたからです。
しかし、免震化をはじめとする現代の建築技術により、時間でしか積み上げることのできない魅力を損なうことなく機能更新できるようになり、古い建物はただ愛でるものではなく、暮らしを支える器として新たな可能性を持つようになりました。
こうした可能性を知っていただき、歴史的建物と共に暮らす豊かなライフスタイルを広めたいという想いで、2020年、WEBメディアnoteで、「イラスト名建築ぶらり旅」の連載を開始しました。多くの方に、親しんでいただくために、絵と文章を画文家・宮沢洋氏に依頼、歴史的建造物の動態保存や改修計画の専門チーム日建設計ヘリテージビジネスラボの西澤崇雄との凸凹コンビで北は函館、南は福岡までの20の建築をめぐりました。
この度その記録の書籍化が決まり、それを記念したイラスト原画展を開催することといたしました。宮沢氏のユーモアあふれるイラストをぜひ、多くの方にご覧いただき、皆様とともに成熟した日本の魅力増大と文化開花につとめていけたら幸いです。
展示方法もサステナブルに。「使った資材を捨てない」木質ユニット「つな木」を使い、ユニークでぬくもりのある展示空間を実現。
会期後、「使った資材を捨てない」展示を目指し、Nikken Wood Labが開発した、トランスフォームする木質ユニット「つな木」を利用して、日建設計の1~5年目の若手が、新しい展示方法を検討しました。こちらもぜひ、お楽しみください。
「原画」の展示は筆者にとっても初めての経験だ。ただ、相談を受けたとき、「原画といってもA4のコピー紙なので、間が持つのかなあ…。画像を拡大プリントして展示した方がよくない?」と思った。けれども、展示に「つな木」を使うと聞いて、「なるほどそれは見てみたい」と思い、OKした。
私が知っていた「つなぎ木」はこんなものだ↓。角材と2種類の金具で組み立てる仮設足場のようなシステムだ。
つな木の使用例はこれまでも何度か見たことがあったが、正直、見た目がちょっとごつくない?と内心思っていた(日建設計の皆さん、すみません)。だが、今回の展示はすっきりしていてびっくり。
まず、上部の横架材がない。これだけで目線レベルのすっきり感がだいぶ違う。
柱の振れ止めと絵の展示面をかねて、アクリルのボードを金具に挟んでいる。原画が宙に浮いているみたいに見えるのがすごくいい。1階は外の緑が透けて見えて、屋外で展示しているよう。
原画が裏から見えるのもグッド。表から見るとプリントに見えなくもないが(皆さんが想像するほど修正跡はないので)、裏から見るとカラーマーカーで塗ったことがよく分かる。
このアクリルボードが「コロナ禍に飛沫防止の仕切りとして使っていたもの」と聞き、「さすが日建設計!」とうなった。知らなかったのだが、今、世の中にはこうしたアクリル板が大量に余っているという。その再利用は「古くなったものを大切に使う」という連載の主旨にも合っている。
ツウ好みな点を褒めると、展示面全体をカーブさせ、小さな凸凹を組み合わせることで、全体が同じ方向に倒れないようにしていることも、モダニズム好きにはグッとくる。構造的にいうとリングガーダー構造と折板構造の組み合わせということになろうか。足もと端部の収め方も立体的でかっこいい。
これまでここで行われた展示には、展示施工会社に1回100万円単位で支払いが発生していたそうだが、今回は材料費タダ(これまでのストック活用のみ)。施工は社内の展示計画チームの自営だ。書くのが最後になってしまったが、今回の展示計画は、この春に日建設計に入社した新人たちが中心となって行った。
展示は7月14日(金)まで(土日祝日は休館)。書籍を買ってから展示を見るもよし、展示を見てから書籍を買うもよし。飯田橋駅から徒歩約10分。新緑を味わいがてら、ぜひ足をお運びいただきたい。(宮沢洋)
改めて書籍はこちら↓。
『はじめてのヘリテージ建築~絵で読む「生きた名建築」の魅力』
「つな木」の販促を頼まれているわけではないが、「つな木」の詳細はこちら↓。
■「もしもつな木キット」販売方法・販売価格(2021年7月15日付けリリース)
本キットは、260,590円(オープンキット参考価格、税込、組立運送費別)からの販売です。キットに部材を付け加えることで、使い方や目的に合ったキットをお選び頂けます。
販売お問い合わせ:三進金属工業(株)東京支社 建材部まで(TEL 03-3669-0800)
納期:受注後30日
専用ホームページ https://tsunagi-wood.jp/