「建築にワクワクを」─山下PMCを10倍に育てた川原秀仁氏が“建築マネジメントの伝道師”に転身

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 以前、「建築の愛し方」で取り上げた川原秀仁氏が新しい道へと踏み出した。見出しを見て、「誰?」と思った人も多いだろう。川原氏は山下PMCの前会長だ。面白過ぎるトーク力と深い建築愛は既出のインタビュー↓をご覧いただきたい。

建築の愛し方10:「J-WAVE」の建築面白解説者は“元DJ”の山下PMC社長、放送は残る2回!──川原秀仁氏

(写真:宮沢洋)

 川原氏は1960年、佐賀県唐津市生まれ。83年に日本大学理工学部建築学科卒業、農用地開発公団に就職。国際協力事業団(JICA)などを経て91年に山下設計へ転職。99年に山下ピー・エム・コンサルタンツ(現・山下PMC)へ移籍。日立マクセル東京本社ビル・プロジェクト、武田薬品工業湘南研究所プロジェクト(国際CMコンクール準グランプリ受賞)などを担当。2012年から同社社長を勤め、22年1月に会長に。社長時代の10年間には、山下PMCの企業規模を売り上げ・利益とも10倍に育てた。今年1月に会長を退任するとともに、山下PMCを退職した。2020年に日本コンストラクション・マネジメント協会会長に就任し、現在も務める。

 「新しいことを始めます」──そう川原氏に聞いて、会いに行った。お会いした3月20日は、なんと川原氏が立ち上げた新会社「ALFA PMC」の初日だった。そんな大事な日に光栄です!

 「ALFA PMC」という社名を見て、プロジェクトマネジメントのコンサルティング会社なんだなと思ったのだが、川原氏が筆者(宮沢)に話したいのはそういうことではないという。「まず力を入れようと思っているのは、マネジメントセミナーです。建設産業の皆さんにマネジメントのエッセンスを伝えていきたいのです」と。

 そう思うようになったのは、2020年に日本CM協会会長に就任して以降、日本各地の設計事務所主宰者や施工関係者にマネジメントの話をする機会が増えたこと。「地方都市の、特に中堅の会社の人たちはマネジメントの知識を強く欲している」と実感したからだという。

 同感。筆者もたまに地方で建築関係者向けの講演をすることがあるので、そういうニーズがあることはよく分かる。

5月からセミナーがスタート

 マネジメントセミナーだが、マネジメントの専門家になるための講義ではない。対象は、設計者、施工会社の監督、発注者など幅広く想定している。 

 「PM(プロジェクトマネジメント)やCM(コンストラクションマネジメント)は、建設分野でこれからの時代を生き抜いていくために、誰もが必要な知識です。未来のスコープをつかむコツを教えたい」と川原氏。

 「生き抜く」と聞くと緊張感があるが、おそらくよくあるお堅い講義ではない。ラジオに出演しても、まるで自分の番組のように楽しそうに話す川原氏だ。映像やゲーム、広告などを扱う「クリーク・アンド・リバー社」と共同でセミナーを開催するというのも面白そう。実務者ではない筆者もちょっと聞いてみたくなる。

 「一番重要なのは、自分の仕事にワクワクを感じるようになること。そう感じるようにならないと世の中が変わらない。そのための後押しをしたいのです」。

 3年後の目標は?と聞くと、こんな答え。

 「建設分野のエンジニアで『マネジメントの重要性』を感じているのは、1割くらいでしょう。それを5割くらいまで上げたいですね」。

 おお、それは世の中が変わりそうだ。応援します!

 正式名称「建築マネジメント塾」は5月からスタート予定。オンラインでも受講できる。詳細はこちらのサイトを。(宮沢洋)