建築の愛し方10:「J-WAVE」の建築面白解説者は“元DJ”の山下PMC社長、放送は残る2回!──川原秀仁氏

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FMラジオ「J-WAVE」の日曜午前の番組「ACROSS THE SKY」(パーソナリティーは女優のヒョンリさん)の中で、山下PMCの川原秀仁社長が毎週出演しているのをご存じだろうか。出番は午前11時5分頃から約10分間コーナー名は「LANDSCAPE WONDER」。世界の名建築や現在の建築トレンドについて、クイズ形式で笑いをまじえがら解説する番組だ。今週末を含めて、放送はあと2回。川原さん、こんな面白い番組が終わるなんてもったいない!(聞き手:宮沢洋)

収録中の川原秀仁氏(写真:山下PMC)

──川原さんのラジオコーナーが2月いっぱいでおしまいだと聞いて、これは急いでBUNGA NETで拡散しなければと、飛んでまいりました。

 ありがとうございます。ようやく慣れてきたところですが、局側と約束した半年はやり遂げましたので。残る2回もぜひ聞いてください。

──今年の9月から始まったんですよね。なぜ川原さんがラジオに出ることに?

 弊社のWEBサイトのディレクターの方が、ラジオ業界にもパイプがあったんです。僕は昔から音楽が好きで、その方とマニアックな音楽の話で大変盛り上がりまして。「川原さん、いつかラジオ番組をやってください」と言われていたのが、本当に実現したんです。僕としては「建築」の番組ではなく、音楽番組をやりたかったんですけど(笑)。だから、引き受けるときの条件も、僕が選んだ曲を1曲かけること、でした。

──単発のゲスト出演ならともかく、いきなりレギュラー番組というのは、怖くなかったですか。

 昔、DJをやってましたから、なんとかなるかなと。

──サラリと言われますが、「昔、DJをやっていた」とは……。

 以前、宮沢さんにインタビューを受けたときにも、話しましたよ。大学(日本大学理工学部建築学科)時代には、イラストレーターやディスコのDJとして活動していました。生まれ育った佐賀県唐津市はサーフスポットとして有名で、サーフィン歴は中学以来40年超です。(関連記事「私の駆け出し時代・川原秀仁氏」日経クロステック

音楽の機材を見ると、血が騒ぐ?(写真:山下PMC)

──イラストとサーフィンは覚えてましたが、そうか、DJもやってらしたんですね。それで、あのよどみないしゃべり…。トークも見事ですが、毎回のテーマが名建築あり、都市問題ありで勉強になります。これまではこんな感じ(↓※)でした。(※各回の見出しは、放送内容を収録したYouTubeにリンクを張ってあります)

2020.09.06|知られざる一級建築士!施設参謀の仕事とは!?
2020.09.13|建築界のノーベル賞!?「プリツカー賞」とは?
2020.09.20|花の都へと生まれ変わった「パリ改造」
2020.09.27|西欧に訪れたジャポニスムの流行
2020.10.04|江戸時代の東京
2020.10.11|江戸から東京へ
2020.10.18|京都のまちづくり
2020.10.25|近代から現代の京都について
2020.11.01|ジャック・マイヨールと日本との関わり
2020.11.08|シネマコンプレックス誕生の背景
2020.11.15|20世紀建築の3大巨匠のひとり、フランク・ロイド・ライト
2020.11.22|世界三大巨匠の接点、ニューヨーク
2020.11.29|最近のスポーツ界の変革とは?
2020.12.06|ロンドンオリンピックのその後に注目!
2020.12.13|モダンでカラフル、奇抜なデザインの建築が立ち並ぶ、オランダ
2020.12.20|「アメリカ建築の聖地」とも言われるシカゴの街
2020.12.27|シリコンバレーから始まった、オフィスデザインによるワークスタイルの変革
2021.01.03|ここ最近の日本建築と街の表情の移り変わりに注目
2021.01.10|女性初のプリツカー賞受賞者でもある女性建築家 ザハ・ハディド
2021.01.17|世界で2人目の女性プリツカー賞受賞者!妹島和世さん
2021.01.24|日本に最も影響を与えた三大建築家の一人、 ル・コルビュジエ!
2021.01.31|スペインが誇る建築家、アントニオ・ガウディ
2021.02.07|近未来に訪れるであろうライフスタイル、 「コネクテッド・ファシリティ」

──話す内容について意識しているのはどんなことですか。

 外国の話は、実際に自分が行ったことがある場所について、自分で感じたことを話しています。古い建築の話をするときは、できるだけ今と結び付けて話すようにしています。

──あ、それは聞いていても感じます。楽しい話の中にも、現在の建築の課題や可能性につながるように話をされているなと。

 有名建築を深堀りする番組はテレビなんかでもありますからね。僕がやるなら、ビジネスに結び付けたり、生活に結び付けたり、僕にしか話せない内容でないと。

(写真:山下PMC)

──ヒョンリさんとの掛け合いも面白いです。

 最初の頃は、台本通りに一人でしゃべる感じだったのですが、途中から、ヒョンリさんとの掛け合いを増やすようにしました。やっぱりヒョンリさんの番組ですから、僕の言葉より彼女のひと言の方がリスナーの心に残る。それに、彼女はとてもクレバーですよね。

──建築もかなり好きそうですよね。それにしても、番組を聞いていると、不思議なくらい山下PMCの宣伝がない。あれでいいんですか(笑)。

 そうなんすよ。初回だけ「施設参謀の仕事とは」という話をしたんですが、以降はほぼ会社の説明はしていません。

──そもそも、ヒョンリさんが川原さんを紹介するときの前振りが、「パートナーは『施設参謀』としてさまざまな建築プロジェクトに関わる川原秀仁さんです」──ですからね。この半年で、「施設参謀」というキャッチコピーがすごく耳になじみました。

 それは良かった。僕は、あの番組を通して我々の仕事がどんなものかを細かく知ってもらおうとは考えていません。建築がどんな世界で未来にどんな可能性があるかを体感してもらえれば。

入社希望の学生が増加!

──番組の反響は?

 入社を希望する学生が増えて、それはラジオの効果があったかもしれません。社内からは「社長があんなに建築が好きだったなんて」という反応ですね(笑)。社内であんな話はしませんから。J-WAVEにも好意的な感想が来ていると聞いています。選曲がいい、という感想も来るらしくて、それが一番うれしい。毎回、テーマに合わせた1曲を選んでますから。

──私にはよく分かりませんが、選曲のセンスが分かる人には分かると(笑)。局の方から、もっと続けてほしいと言われませんでした?

 言われていますが、準備が大変なんですよ。毎回、A4判3枚くらいのメモをつくって、放送作家とやりとりしてから収録に臨んでいます。ひとまずやり遂げました。特番みたいなものなら出ますけれど、毎週はきついです。

(写真:山下PMC)

──残る2回の内容は?

 それは、聞いてのお楽しみです。ぜひ聴いてください。

──分かりました。日曜午前11時5分頃、81.3J-WAVE、皆さん聴いてください!

川原秀仁氏。聖路加タワーにある山下PMCのオフィスにて。1960年佐賀県唐津市生まれ。83年に日本大学理工学部建築学科卒業、農用地開発公団に就職。国際協力事業団(JICA)などを経て91年に山下設計へ転職。99年に山下ピー・エム・コンサルタンツ(現山下PMC)へ移籍。日立マクセル東京本社ビル・プロジェクト、武田薬品工業湘南研究所プロジェクト(国際CMコンクール準グランプリ受賞)などを担当。12年から現職(写真:宮沢洋)

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