東京・乃木坂の国立新美術館で「マティス 自由なフォルム」が2月14日(水)から始まる。2月13日に行われた内覧会に行ってきた。その速報である。
なぜ「BUNGA NET」で画家のアンリ・マティス(1869~1954年)なのか。もちろん筆者(宮沢)が好きだからだ。絵を描く者であれば誰もマティスに憧れない人間などいないのではないか(あの線と色は描けない…)。でも、それだけなら勝手に見に行けばいい。このサイトで取り上げる理由は、同展の目玉が「ロザリオ礼拝堂」(ヴァンス、1951年竣工)の内部空間の再現だからだ。
マティス晩年の集大成であり、「生涯の傑作」と自ら評したという。教会の建物自体も自らアイデアを出し、レシギエ修道士に指示して設計したといわれる。が、もちろん画家と修道士が実施図面レベルで設計できるわけがなく、全体の面倒を見たのはオーギュスト・ペレ(1874~1954年)だ。そう、“コンクリートの父”で、ル・コルビュジエの師匠。ペレの「ランシーの教会堂」(1923年)は建築史に残る傑作だ。
その大巨匠を製図係のように使って完成させた「ロザリオ礼拝堂」は、ニースから車で30分ほどの小高い丘の住宅地に立っている(らしい)。実物を見たことはない。フランスには何度か行ったが、パリからは遠い。
再現とはいえ礼拝堂を体験してみたかった。写真を見ても、その神髄がよくわからないのだ。オーギュスト・ペレらしさはどこにあるのか…。
再現ルームはこちらだ。左手の壁のステンドグラスから光が入る。
結論から言うと、マティスが自ら「生涯の傑作」というほどすごいのか、どこがオーギュスト・ペレっぽいのか、筆者にはよくわからなかった。でも、写真では気づかなったことがいくつかわかった。
1つは床のパターン。フリーハンドの天才であるマティスにしては意外にも思える、こんな幾何学パターンが施されている。
写真だと椅子が置かれていてよく分からないが、床に並ぶ点々とステンドグラスの透過光の重なりが美しい。
もう1つは、太陽の入る側の壁を2段に雁行させていること。祭壇近くの壁が引っ込んでいる。光の濃淡で奥行き感を強調しようという狙いか。これもマティスのアイデアなのだろうか。
祭壇が壁に対して45度振られていて、壁のコーナー部分を向いていることも、ここでの発見。左の光の壁、右の聖像(マティス画)に見守られるような格好だ。軸線を重視する建築家ならば、祭壇を斜めに振ったりしないだろう。
それと、外観写真でよく見るこっち側の妻面↓は、入り口ではなく、祭壇側だということも再現展示を見てわかった。
どうせなら天井もつくってほしかったと思うのだが(写真を見ると三角天井ではなくなぜかフラット↓)、再現展示で天井をはめるのはコストの問題なのか消防の問題なのか、難しかったのだろう。
建築展で再現展示をするとよく「実物の冒とく」みたいな話になるが、筆者は再現大賛成である。ここでわからない答えがきっとあるはずと、実物に行きたくなる。
ちなみに丹下健三も1951年、パリでマティスを訪ね、「ロザリオ礼拝堂」について根ほり葉ほり聞いたらしい。やっぱり写真を見てもなんだかわからなかったのではないか。あるいは、建築家とアーティストの協働について思うことがあったのか(猪熊弦一郎とか、岡本太郎とか)。
実物の「ロザリオ礼拝堂」の写真をもっと見たいという方は、こちらの『家庭画報』WEBの記事(↓)がお薦め。
https://www.kateigaho.com/article/detail/167625
マティス展の会期は5月27日(月)まで。大勢のメディアが来ていたので、他の作品は他のサイトを検索して見てほしい。(宮沢洋)
展覧会名:マティス 自由なフォルム
会期:2024年2月14日(水)~5月27日(月)
休館日:毎週火曜日※ただし4月30日(火)は開館
会場:国立新美術館 企画展示室 2E(東京都港区六本木7-22-2)
開館時間:10:00 ~ 18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで
主催:国立新美術館、ニース市マティス美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網
特別協賛:canon
協賛:DNP大日本印刷
協力:日本航空、日本貨物航空、ヤマト運輸
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、J-WAVE
観覧料:当日2200円(一般)、1400円(大学生)、1000円(高校生)
公式サイト:https://matisse2024.jp/