修復進むノートルダム大聖堂の見学ひな壇にびっくり、仮囲い解説のセンスにも脱帽

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 パリのノートルダム大聖堂は、2019年4月15日に発生した火災被害により現在、修復工事が行われている。日本の報道では、具体的な内容は伝わってこない。どうなっているんだろう。行ってみるとこんなことになっていた。

(写真:宮沢洋、以下も)

 西側の広場に巨大な見学用のひな壇が! 

 木造の仮設建築で、キャパシティは300人くらいだろうか。無料で入れる。街じゅうの建築を見て回ってかなり疲れていたので、座って見られるというのはうれしい。上段に座ってぼおっと15分ほど見ていた。みんながそんな感じで出ては入っていくので、行列ができることはない。

 宗教建築というのは、もともと椅子に座って思いを馳せるものだ。工事で中に入れない今、あわただしく外から見学するだけでなく、「どうぞじっくり座ってみてください」というスタンスは素晴らしい。お金をとらないのも、さすが文化の国フランス。

 日本でも、熊本城の修復の見せ方(日本設計による空中見学路、こちらの記事)はセンスがいいなと思ったが、ただ座ってじっくり鑑賞させるというのも、今後のヒントになりそうな手法だ。

絵をみるだけで工事のポイントが分かる!

 そして、工事現場の仮囲いに貼られた写真や図解のセンスの良さ。図解は説明文を読まなくてもほとんどのことが分かる。こんな感じだ。

屋根だけでなく、塔も木造なのか…。といったことも、絵を見るだけで分かる
なるほど、クロスボールトってこうやってつくるのか…

 日本だと仮囲いにこういう図があったとしても、もっと専門的な図になるよなあ。これは一般の人に向けて、おそらく展示のプロか図解本をつくるプロが描き下ろしている。写真も素人写真ではなくナショナルジオグラフィックを見るようなクオリティーだ。

 これは建築を大切にする歴史の違いか…。そんなジェラシーを感じなくなるように、日本に建築好きを増やすべくもっと頑張らねば。

ポンピドゥーセンターから修復中のノートルダム大聖堂を見る
これは火災前の2018年に撮ったノートルダム大聖堂

 ノートルダム大聖堂の修復工事は当初、2024年夏に開催されるパリオリンピックに間に合うように完了することが期待されていた。今春の政府発表によると、大聖堂で宗教行事を行ったり、公共の場として使用できるようになるのは、2024年12月から。改修工事自体は2025年まで続くと、文化相がコメントしたとのことだ。(宮沢洋)