妹島和世氏が東京都庭園美術館「館長」として実現した「ランドスケープをつくる」展に大納得

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 「妹島和世氏が東京都庭園美術館の館長に」という電撃ニュースが伝わったのは今年の6月下旬。就任は7月1日。それからわずか4カ月で実現したこの企画。いろいろな意味で「さすが妹島さん!」と拍手を送らずにいられない。

(写真:宮沢洋)

 目黒駅からほど近い東京都庭園美術館で10月28日から2023年1月末まで開催されているテーマ展示「ランドスケープをつくる」だ。現在は第1回として、熊谷組と石上純也建築設計事務所を中心とする設計企業体が進めている「徳島文化芸術ホール(仮称)」に関する展示を行っている。この展示は12月4日(日)まで。

 「さすが」その1。まず、会場の建物が「さすが妹島さん」なのである。リリースには「正門横スペース」と書いてあって、どこのことだろうと思っていたら、ゲートの左手にあるこれだった。何だこの建築、かっこいい!

 東京都庭園美術館には、両手くらい行ったことがあるのだが、恥ずかしながらここにこんなものがあったという記憶がない。聞くと、以前はミュージアムショップやチラシ置き場として使われていたという。そして、館内の説明を読むと、「朝香宮邸時代に門衛所として建てられた」とある。そうか、だからこんなに凝っているのか。

 私のようなボンクラは、朝香宮邸として建てられた華麗なるアールデコの本館だけに目が行ってしまい、こんないい建築を毎回スルーしていた訳である。それに気づかせようという狙いがさすがだ。

 「さすが」その2。展示されている「徳島文化芸術ホール(仮称)」が、まだ完成しておらず、進行中のプロジェクトであること。一般の人は、よその県で進行しているプロジェクトなんて、まず知ることはない。進行する日本の最先端プロジェクトをリアルタイムで多くの人に知ってもらおうというのがさすがだ。

展示内容は、プロポーザル時の敷地を含む全体模型(1/300、手前)や断面模型(1/100、奥)、関連映像や図面など

展示室の一角では、旧朝香宮邸の竣工時の建物及び室内の写真や設計図面、新館改修後の建築模型など、旧朝香宮邸を紹介する特別展示も行っている。こちらは2023年1月末まで

 「さすが」その3。入場が無料であること。この建物はチケットを切る手前にあって、チケットを買わずに見ることができる。

 隣には、やはりチケットを買わなくても入れるレストランがあるので、ここで展示を見て食事でもして帰れば、それだけで文化的な1日だ。もしここを有料エリアに含めてしまったら、たくさんの美術品を見た後で、オマケ的に見ることになるだろう。無料にしたのは、「ここだけを見に来る」という選択肢を作るためなのではないか。そういう狙いだと思うので、この記事もあえて本館や新館の写真は載せない。

 「第2回は、12月6日午後より、横浜国立大学大学院Y-GSAの学生による「スカイハウスの研究」に関する展示を予定しています」とのこと。菊竹ファンとしては、こちらも楽しみだ。(宮沢洋)

【展示詳細】
■名 称 特別展示・テーマ展示「ランドスケープをつくる」
■会 期 2022年10月28日(金)~2023年1月末(予定)
■会 場 東京都庭園美術館 正門横スペース
■休館日 毎週月曜日
■入場料 無料
公式サイトはこちら