内藤廣氏の内装設計で「TORAYA GINZA」4月11日リニューアルオープン、赤鬼はどこに?

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 和菓子の虎屋(代表取締役社長:黒川光晴)は 4月11日(木)、新築した「TORAYA Ginza Building」の4階に「TORAYA GINZA」をリニューアルオープンする。ビル自体は鹿島の設計・施工で、「TORAYA GINZA」の内装設計は内藤廣氏。当サイトで4月1日から内藤氏の連載が始まった嬉しさもあり、内覧会(4月2日に開催)のスナップ写真を使ってフライング気味にリポートする。

(写真:宮沢洋)

 既存のとらや 銀座店のビルを建て替え、地下1階・地上12階の複合ビルとした。敷地の一角にあった「銀座 黒田陶苑」もビル建設に参加しており、銀座 黒田陶苑が5階、TORAYA GINZAが4階に入る。銀座 黒田陶苑、TORAYA GINZAのいずれも内藤氏が内装設計を担当した。

内藤廣氏。TORAYA GINZAのテラスにて

 ビルは銀座中央通りに面しているが、こちら側(左下の写真)だと、よほど注意していないと素通りしてしまう。銀座 黒田陶苑やTORAYA GINZAに上るエレベーターの入り口は、西側のすずらん通り側にある(右下の写真)。

すずらん通り側の1階は、ビルの完成時にはこんな感じになっているはず(虎屋のプレスリリースより)
周辺マップ(虎屋のプレスリリースより)

 以下、虎屋のプレスリリースから、内装に関する部分を引用する(太字部)。

 壁には鈍く輝く瓦タイルを使用し、空間の音にこだわるなど、丁寧に素材を選び、つくり込まれた空間です。 ゆったりとしたソファー席のほか、テラス席、奥座敷のような個室など、 さまざまなタイプのお席をご用意いたします。 (内藤廣氏による、とらやでの主な設計店舗:2009年「とらや 京都一条店」、2018年「とらや 赤坂店」など)

店内は細長く、入り口から光に導かれて奥に進むと客席
テラス席
初めて使用したという発泡瓦タイル

<基本情報>
TORAYA GINZA(トラヤ ギンザ)
住所:東京都中央区銀座7-8-17 虎屋銀座ビル 4階
営業時間 :11:00~19:00(ラストオーダー18:30)
定休日 :元日、毎月第2月曜日(祝日の場合は第3月曜日)
席数:42席(室内30席 テラス席12席)
アクセス :東京メトロ銀座線・日比谷線・丸の内線 銀座駅 A2出口より徒歩5分

 建築データは以下の通り(内藤廣建築設計事務所提供)。

■TORAYA Ginza Building
階数:地下1階・地上12階
構造:地下RC造、地上鉄骨造
延べ面積:5043.13㎡
建築設計:KAJIMA DESIGN
建築施工:鹿島建設 東京建築支店

■TORAYA GINZA
経営者:虎屋
開店日:2024年4月11日
内装設計:内藤廣建築設計事務所
内装施工:丹青社
EVホール左官:久住章

青鬼優位に見えるインテリアで、赤鬼はどこに?

 冒頭に書いたように、本サイトで4月1日から内藤氏の連載、「赤鬼・青鬼の建築真相究明」が始まった。

『建築家・内藤廣 BuiltとUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い』

 内藤氏の室内空間は、筆者(宮沢)にはいつも青鬼優位に見える。今回もそう感じた。やり過ぎず、品があって落ち着く。だが、内藤廣展(2023年)の図録を見たら、このプロジェクトに関して赤鬼・青鬼のこんなやりとりが載っていた。ちょっと意外に思ったので、引用する。

[赤]これって今、鹿島建設がつくっているところだね。

[青] でも、建築じゃないんだよね、インテリア。

[赤]いやいや、インテリアを馬鹿にしちゃいけない。かつての杉本貴志のBarラジオや、杉本さんと若林奮のコラボの六本木パッシュ ラボ、ウィーンにあるアドルフ・ロースのアメリカンバー、なまじの建築なんかよりよっぽどインパクトのある空間を生み出すことだってできるんだから。考えてみれば、利休の待庵なんて、建築っていうより極小のインテリアだからね。

[青] うーん、レベル高すぎだなー。要は、建築は外気の気候条件や都市的な条件と闘わなきゃいけないから、その分不自由なところがあるけど、インテリアはそういうものから関係ないから、それだけ空間の可能性に絞って挑戦できるってことだね。
(中略)

[青]虎屋の仕事はいくつもさせていただいてきたけれど、その都度新しい挑戦をしなければならない。なにせ会長の黒川光博さんが伝統は革新の連続、っていっているんだからね。

[赤]これは自らに課したタスクフォースのようなもんだよ。どんな状況でも挑戦する、新しいものを付け加える。赤も頑張る、青も頑張る。

 これを読んで「そうなのか」と思ったことの1つは、内藤氏にとってインテリア設計はむしろ赤鬼の出番であるということ。もう1つは、内藤氏が「杉本貴志のBarラジオ」を記憶に残るインテリアの一番に挙げていること。筆者も実物を見たことはないが、1970年代の伝説のバーで、確かに赤鬼的空間だ。

 そういう目で改めてTORAYA GINZAを見ると、赤鬼的な部分は店に入る前のエレベーターホールの壁なのではないか。まさに「赤」だ。

 この赤い壁は左官職人の久住章氏によるものだ。百戦錬磨の久住氏も使ったことのない顔料を用いて出した赤だという。

左官職人の久住章氏(手前)

 この壁が赤鬼的だというのはあくまで筆者の見立てだ。オープンしたらぜひ店を訪れて、どこが赤鬼なのかをご自身で発見していただきたい。

 内覧会では、TORAYA GINZA限定メニューの「馨(かおる)」(きんとん製御膳餡入)をいただいた。めちゃおいしい!

 なお、この日は5階の銀座 黒田陶苑も内覧できたが、写真撮影がNGだったため、内藤事務所から借りた写真を何枚か。

銀座 黒田陶苑の⼊り⼝(5階エレベーターホール)(写真:内藤廣建築設計事務所)
店内(常設展⽰)
店内(企画展⽰)
⽴礼席

 内藤氏によると、こちらはテーマが「闇」とのこと。筆者世代には白井晟一を連想させる空間。TORAYA GINZAもエレベーターホール以外はアンダーな色調だが、黒の深さが違う。内藤氏の中には「黒鬼」もいるのかもしれない。(宮沢洋)