日曜コラム洋々亭32:「人生初」連発、『隈図鑑』レビュー記事ベストファイブ

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 書籍『隈研吾建築図鑑』が5月11日に発売になってからちょうど2カ月。五輪はグダグダだが、隈さんへの関心は引き続き高いようで、2度目の増刷の知らせがあった。初の単著なので、売れていることはもちろんうれしい。それに加えて、いろいろな書評欄で取り上げてもらっていることがすごくうれしい。

憧れの「散歩の達人」にも!

 短い書評であっても、自分では気付かなかった点が指摘されていてハッとしたり、クスッとしたりする。特に印象的だった5つを掲載順にまとめてみた。

01◆日経電子版 NIKKEI STYLE「ブックナビ」 2021年5月6日公開
隈研吾建築30年の進化 図解で読む「足す楽しさ」とは(こちら)

 これは、発刊に合わせて編集担当のSさん(日経アーキテクチュア副編集長)が仕込んでくれた記事で、内容は書籍の隈インタビューの抜粋。書籍にはないプラスαの内容はSさんが書いたリード(前書き)だけだが、冒頭のこの下り↓に笑った。

 「国立競技場や高輪ゲートウェイ駅、角川武蔵野ミュージアム……。『また隈さんか』と建築設計者たちが羨むほど、近年の建築・都市におけるビッグプロジェクトは建築家の隈研吾氏が携わったものが目に付きます」

 「また隈さんか」って、心では思っていても、大メディアで堂々と書いてよかったんだ(笑)。このひと言でこの本のスタンスを伝えている。お見事、Sさん。たぶん、これは世界のANDOや世界のITOに対してはなかなか書けないと思われ(隈さんも今や世界のKUMAだけど…)、そのことは「様々な見方を受容する隈研吾」という建築家としての特殊性を象徴しているように思えるのである。

02◆TECTURE MAG 2021年5月15日公開
日経アーキ「建築巡礼」の画文家・宮沢 洋氏の新刊『隈研吾建築図鑑』(こちら)

 発刊後、いち早く取り上げてくれたのがこのサイト。ありがとうございます。

 このレビューで気に入ったのはこの下り。

 「建築業界に携わっている人間であれば、一般書店には流通していない建築専門ジャーナル『日経アーキテクチュア』の巻末に連載されている、宮沢氏と磯 達雄氏によるレポート記事『建築巡礼』を一度は目にしているはず」

 タイトルも含めてだが、「建築巡礼」を知っているという前提で書かれているのがうれしい。このオシャレなデザインサイトで……。だいぶ盛ってくれているとは思う。それでも、ここは気持ち良く、「建築業界の人は過半が建築巡礼を知っている」と受け入れておこう。ちなみに、TECTURE MAGはこういうサイト↓です。

 「【TECTURE MAG】はデザインを基軸に、ビジネス・ファッション・アートなど異なるジャンルをブリッジングすることで、クリエイティブにデザインをサポートする空間デザインメディアです。オリジナル記事は英語を併記し、国内だけでなく海外への情報発信を積極的に展開します。(中略)本サイトを企画・運営するtecture株式会社は、建築家の谷尻誠、編集者の佐渡島庸平、開発者の川田十夢、代表の山根脩平が立ち上げたスタートアップ企業です」

03◆Casa BRUTUS『casabrutus.com』 2021年6月14日
“隈研吾”建築の進化が、面白おかしく理解できるイラスト図鑑が登場!(こちら)

 おなじみカーサブルータスのWEB版である。ここは人生初のインタビュー記事を載せてくださった。聞き役のインタビュー記事はたくさん経験したが、聞かれるのは初めてだ。冒頭のこの下りに、「画文家」兼「編集者」である私の特性がよく表れている。ナイス質問!

―編集者としての視点を活かした図解は非常にわかりやすく、写真以上の効果があるように感じられました。
宮沢:「ここに立面図を入れたい」「上から見た絵のほうがわかりやすい」「素材や構造などがよくわかるディテールが欲しい」と思ったら、そこに必要なものを描けばいいだけなので、確かに自由度は高いですよね。(中略)普段の編集作業で抱きがちなストレスを感じることなく、思いのままを形にできたと思います。

 余談だが、この記事が掲載された連絡を受けてサイトを見てみたら、別の記事に私が描いた安藤忠雄さんの似顔絵が知らぬ間に使われていた。使うのはいいんですけど、お知らせしていただけると……(笑)。

挑戦し続ける建築家【安藤忠雄検定】(こちら) 2021年5月30日公開

04◆designboom 2021年6月18日公開
kengo kuma architectural evolution: 50 key projects illustrated in book by hiroshi miyazawa(こちら)

 何と海外メディアにも登場。メインタイトルに「hiroshi miyazawa」と著者名が入っていることに感動。クリエイティビティを尊重する真摯な姿勢に頭が下がる。

 レビューの中で気に入ったのはここ。

each project comes with a unique illustration, architectural data and text description (sadly only in japanese for now!).

 カッコ書きの部分、私の理解では「残念ながら今のところ日本語のみ!」って書いてありますよね。ぜひ、これを読んだ英語圏の出版社の方、翻訳してください!!

 designboom(デザインブーム)はこんなメディア↓だ。私もよく見てはいたけれど、デザイン系では「世界最初のオンラインマガジン」だったとは。改めて、掲載いただき光栄です。

MILAN | BEIJING | NEW YORK | TOKYO
founded in 1999, designboom was the first online magazine worldwide. a cultural platform that is crazy popular and has built up a cult following over 20 years.

05◆散歩の達人 2021年7月号 「サンポマスター本」
『隈研吾建築図鑑』 隈建築の変遷をイラストでたどる

 これは知人から「載ってるよ!」と教えられて知った。『散歩の達人』は憧れの雑誌。どれどれと見てみると、「サンポマスター本」コーナーの一番大きい扱いだ。感涙。

 今まで知らなかったが、このページはWEBでも読める。

さんたつ by「散歩の達人」
「サンポマスター本」(こちら)

 この書評、「書評としての完成度」が素晴らしい。ちゃんと全体の内容を踏まえたうえで、書き手のエピソードを挿し込み、それによって視点を深める。書評の手本のようだ。奥付を見ると、これを書いた「高橋」さんは、どうやら編集部の人らしい。高橋さん、これ自体が1つの作品です。皆さんもぜひ読んでみてください。

 ほかにも、隈図鑑を紹介してくださった方、ありがとうございました。「まだ、うちでは…」という編集者の方。腐る本ではありませんので、今からの掲載でも全く遅くありませんよ!(宮沢洋)