裏方空間を木漏れ日に変える「Envi-lope-01」、日建設計・山梨知彦氏とファサードチームの中小オフィス戦略を聞く

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 日建設計・山梨知彦氏の連載第2回に登場する「Envi-lope-01」を、山梨氏本人の案内で見学させてもらった。

「Envi-lope-01」(写真:宮沢洋)

 この外装システムは日建設計東京オフィスの改修を取材したとき、3階の一角に間仕切りとして使われており、気になっていた。

日建設計東京オフィス3階。2023年3月撮影

 一体、どういう建築なのだろうか、と思っていたのだが、こういう全体像だった。

 場所は東京・神保町。「Envi-lope-01」というのは外装システムの名称で、建物名は「神保町SF1」。鉄骨造・地上9階建ての賃貸オフィスビル。建築主は小学館不動産。2022年9月に竣工した。賃貸オフィス紹介サイトにも載っている。(例えばこちら

 旗竿形状の細長い敷地に立つ建物で、この外装が使われているのは、前面道路側のファーサード、主に屋外階段部分だ。奥側は潔く普通の壁。つなぎ方がすっきりしているためか、取って付けた感はない。

 山梨氏は連載第2回でこの外装をこう説明している。

 「Envi-lope-01」。ルネ青山ビルでの経験をもとに、ダブルスキンの内側を可視化し、さらに空間体験も出来る環境配慮型スマートスキンを目指した計画。昼光の下で木漏れ日のような光環境をうみだしつつ、太陽光の70%をカットしている。

 現地で聞いた説明を補足していく。

左から山梨知彦氏、FETアソシエイトファサードエンジニアの舘景士郎氏、設計部門恩田設計部の添田昂志氏。この他、石月亜希子氏がデザインに参加した
各階のめくれたように見える部分に非常用進入口がある

 補足1:この「Envi-lope」プロジェクトは、山梨氏が社内のファサードエンジニアリング部門「FET」に声をかけて、3年ほど前から進めている。今回は新築ビルに使ったが、主な狙いは中小の既存ビルの脱炭素化を進めること。近い将来、省エネ改修時に建蔽率などの制限が緩和されることを想定している。

 補足2:円筒形の部材はZAM鋼板をプレス成型で製作した(ワンプレスのみ)。見付開口率を約70%確保しつつ、日射負荷を約65%低減。

 補足3:円筒形部材(ZAM鋼板)は厚さ0.8mmで1つ約200g。アルミルーバーと比較すると、主部材の体積比は約75%。原材料の製造CO2排出量は80%低減。

上階の非常用進入口部分
屋外階段部分
高岡市の瀬尾製作所と共同開発した。特許申請中

 補足4:円筒形部材は1本のワイヤでも固定できるが、フェイルセーフのため、縦のワイヤを2本にした。工場で面状に組み立ててから、現場に設置。コスト感はアルミルーバーと同等とのこと。「同じ方法でもコストはもっと下げられるだろう。コストの安い別の方法も検討中」と山梨氏。

山梨氏が担当した「神保町シアタービル」(2007年)が間近にあり、オフィス上階から見下ろせる

 ところで、筆者は「Envi-lope」という名称が、てっきり「環境(environment)のロープ」なのだと思っていた。ZAM鋼板を吊っているワイヤを「ロープ」と呼んでいるのだと思っていたのだ。だが、調べてみたら、ロープのつづりは「rope」だった。そして、ようやく気づいた。そうか、「envelope(包むもの)」のもじりか!! 筆者と同じように考えていた人もいるかもしれないので、恥をさらして補足しておく。(宮沢洋)

改めて連載第2回はこちら↓。
山梨知彦連載「建築の誕生」02:内/外──隔てる「ファサード」から、つなげる「スキン」へ