内藤廣氏新作「丸和新社屋」にて無料とは思えぬ濃厚巡回展、関西の内藤ファンは急げ!

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 建築家・内藤廣氏の設計で和歌山県紀の川市に今春完成した丸和新社屋。そこで4月27日から5月25日まで行われている新社屋竣工記念展示「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い」を見に行ってきた。

丸和新社屋4階での展示風景。展示物の写真撮影は不可だが、本記事のために許可を得て撮影(写真:特記以外は宮沢洋)
西側外観

 本サイトの連載「赤鬼・青鬼の建築真相究明」でお世話になっている内藤氏の新作&巡回展なので、マッハのスピードで和歌山へ…と言いたいところだが、別の用事に絡めて行ったため、会期があと1週間しかない…。結論から言うと、無料とは思えない「見ごたえ大あり」の展示だ。関西方面の内藤廣ファンは今すぐ行くべし!

 展覧会リポートの前に、まずは建築について。太字部は、内藤事務所による公式説明文。

「丸和ミライプロジェクト」(丸和新社屋)
和歌山県でリネンサプライを担う企業の新たな拠点施設。本社屋と工場のある工業団地を臨む一角に、社員食堂や研修スペースからなる本棟と、保育所機能をもつ別棟を計画。間口約36m、地上4階建ての本棟ファサードは、全面をアルミ製のすだれで構成する。別棟は、楕円形の平面に勾配屋根を木垂木で架け、中央には縦横2m超の楕円形トップライトを設ける。

南側外観
北側には駐車場と外構を整備中。左奥が別棟の保育園
保育園。屋根は楕円のラッパ型で微妙に傾斜している(この写真:内藤廣建築設計事務所)
本棟外装のアルミすだれは引っ張って留めている
本棟中央を貫く階段(半屋外)の4階

 丸和(和歌山県紀の川市、代表取締役:丸山昌三)は、「人にやさしい、地球にやさしい」社会の実現を目指し、リネンサプライ事業(シーツやタオルなどの交換)を主軸に、ホテル・レストラン事業、福祉事業など人間の五感・感性に働きかける事業を創出してきた。2020年6月に創業60年を迎えた。

保育園内。内藤氏が保育園を設計するのは初めて(この写真:内藤廣建築設計事務所)
保育園のトップライト。モンゴルの遊牧民の「ゲル」の光がヒントになっているという

 本社近くの敷地に、認可保育園を併設した研修施設を建てるに当たり、内藤氏に設計を依頼した。多忙な内藤氏がどうして和歌山の企業の設計を?と思ったのだが、答えは図録の赤鬼・青鬼の対話に書かれていた。

(スケッチ:内藤廣)

[赤]長い手紙をもらった。こういうの弱いんだよなあ、オレ。

[青]これまでやってきた事務所の建築に関する感想があって、和歌山にもそういうものをつくってほしい、とのこと。

[赤]和歌山は遠いなあ、と思いつつも、この熱意には応えざるを得まい、っていうことで会って話を聞くことにした。どうやら、和歌山の優良企業らしい。社長はめいっぱい明るい人で、かなりの建築好き。経営者としての青鬼と建築好きの赤鬼が同居している。なんか似てるよね。

 筆者も丸山昌三社長にご挨拶させてもらったが、なるほどそんな人だった。

 今回の展覧会は、丸山社長が昨年9月~12月に島根県芸術文化センター「グラントワ」の島根県立石見(いわみ)美術館で行われた「建築家・内藤廣/Built とUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い」↓を見て、「こういう展示をうちでもやれないか」と内藤氏に持ち掛けたことで実現したという。

自然光が入る展覧会でゆったり展示

 今回、展示しているのは、グラントワでの展示物の一部。4テーマのうち、「BUILD」(すでに建設された建物)の部分だけだ。とはいえ、計40のプロジェクトを3フロア使って展示しているので(4階・3階・1階)、すごいボリューム感。グラントワでは閉じた展示室での展示だったが、ここでは全周から自然光が入るので、屋外気分でリラックスして見ることができる。何度も言うが、この内容で入場無料とは…。

4階の展示
3階の展示
1階には丸和新社屋に関するものを展示している
会場案内図

<展覧会概要>
丸和 新社屋竣工記念展示「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の果てしない戦い」
会期:4月27日(土)〜5月25日(土)
休館日:日曜・祝日
開館時間:10:00〜16:00 入場無料、申込み不要
会場:丸和新社屋
和歌山県紀の川市桃山町調月1758-14

なお、別棟の保育所棟の内部は、期間中も見学できない。今後、1階にカフェを設けることを予定しており、この部分↓は誰でも入れるようになるという。(宮沢洋)

カフェとなる予定の1階東側スペース。時期は未定