タワー丸ごと免震化、ついに「建築物」となった名古屋テレビ塔が本日開業

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 前回は名古屋・栄地区の「久屋大通公園」のリニューアルをリポートした(開業前から抜群の集客力、名古屋・栄の復権担う「久屋大通公園」はこんなに変わった)。今回は公園とともに、9月18日にリニューアルオープンする栄地区のシンボル「名古屋テレビ塔」をリポートする。

(写真:宮沢洋、以下も)

 開業2日前の9月16日に報道向けの内覧会が行われた。

 名古屋テレビ塔は、構造設計者である内藤多仲と日建設計が設計し、竹中工務店の施工により1954年に完成した。高さ180m。日本で最初に完成した集約電波塔だ。築51年目の2005年に、国の登録有形文化財に登録されている。2011年のデジタル放送化に伴い、集約電波塔としての機能は終えていた。

改修設計は日建、施工は竹中

開業の喜びを語る名古屋テレビ塔の大澤和宏代表

 所有者である名古屋テレビ塔株式会社(代表・大澤和宏、右の写真)は、現状の形を変えず、用途変更と免震化を同時に行う全面リニューアルを決断。2019年1月から営業を休止し、工事を進めていた。

 改修の設計者は日建設計、施工者は竹中工務店だ。再生事業の総合プロデューサーは中田朝之氏が務めた。内覧会で配られた冊子を見ると、日建設計の担当者は若林亮氏と石森秀一氏。若林氏は名古屋駅前の「モード学園スパイラルタワーズ」(2008年)の設計担当者でもある。

 報道によると、免震工事に約9億円、全体では約30億円の工事費を要したという。

再生事業総合プロデューサーの中田朝之氏

 現地で設計担当者に話を聞くことはできなかったが、総合プロデューサーの中田朝之氏(左の写真)に話を聞くことができた。中田氏は2006年に実施されたテレビ塔の改装から関わっている。

 中田氏は、「今回のリニューアルのポイントの1つは、工作物から建築物への変更。もう1つは文化財である塔の形を変えずに免震化したことだ」と語る。

 同氏によると、改修前は施設全体が工作物の扱いだった。そのため、2011年に集約電波塔としての機能を終えた後も、低層部を商業施設として利用できなかった。今回の改修では、低層部を現行の建築基準法に合わせ、「建築物」扱いとした。上部は工作物のままだという。

塔の途中でなく、柱脚下部で免震

 現行法規に合わせるための最大のネックが耐震性。耐震診断では、震度6以上の地震に耐えられないという判定だった。

 2010年ごろから日建設計を交えて免震化の検討が始まった。当初は、塔体の途中に免震層を入れる案もあった。「通天閣」の免震化はこの方法だ。しかし、このやり方だと、下部の構造体を太くして固めざるを得ない。「形を変えない」ことを重視し、各柱脚の基礎の下に免震層を組み込むことにした。

免震化について説明する中田氏

 柱脚が広がるのを防ぐため、タイバー(水平に連結する鋼材)で4本の脚を結んでいる。下の写真の白い帯の部分がタイバーのピットだ。

 免震化により、3階は商業ゾーンとなった。

 お土産売り場の店名は「多仲」。そう、内藤多仲だ。

この日は開業前なので、多仲チョコクランチが買えず、残念。

タワー内にホテル

 4~5階はなんとホテル。「THE TOWER HOTEL」という新ホテルで、「タワーの中のホテルは世界でここだけ」(中田氏)。営業開始は10月1日からだ。

 あちこちに、鉄のごつい斜材がむき出しになっていて面白い。この日は客室は見学できなかったが、客室にも斜材が露出したタイプがあるという。

 ホテルには、タワー脇に新設したエレベーター(上の写真の左側)で直接アプローチすることができる。

 上部の展望台に向かうエレベーターは、免震化に伴い1~2階の位置を変更した。撤去した1階のエレベーターシャフトの使い方にびっくり。

 扉を開くと、中はカラオケルーム!!

 上部の展望台も内装をリニューアルした。

免震層を探せ!

 この施設、建築関係者には、免震層のエキスパンションジョイントを探すのが面白いかもしれない。

 広場から立つ柱脚の下は分かりやすい。

 1階店舗のテラス席(上の写真)は非免震で、そこに立つ柱脚だけが免震。

 新設したエレベーターシャフト(上の写真の左)は非免震で、塔側(右)は免震。

 一般動線ではないが、こんな階段(↓)も。上は免震、下は非免震。

 免震改修の教材としても面白い建築だ。(宮沢洋)