建築を楽しむ方法は無限にある。本シリーズ「建築の愛し方」では、「そんな方法があったのか!」「まさかそこまで!」と私(宮沢)が強く惹かれた建築LOVERたちを取り上げていく。今回は「南洋堂書店」の店員、関口奈央子さんがインスタグラムに投稿している「建築書+旅」写真の後編。勝手に選ぶベスト6発表。たぶん世界初開催。
──これまで投稿したものの中で、「これは多くの人に見てもらいたい」と思うものを、私と関口さんでそれぞれ3つ挙げてみましょう。交互に1つずつ。まず、私からはこれです。
──藤森照信さんの「高過庵(たかすぎあん)」。高過庵の外観写真は、多くの写真家が撮っていますが、私にとってはこれがベストです。本の表紙のところだけ光が当たっている!
この光を待つために、相当粘りましたから。粘ってよかったです。ありがとうございます。
──藤森さんに見せたいですね。では、次は関口さん。
「国立京都国際会館」(設計:大谷幸夫)です。これは本来、特別なツアーでないと入れない建物なんです。それが、外で本を立て写真を撮っていたら(下の写真)、館の方に入れていただいて…。
──なるほど、真剣に撮っている姿が心を動かしたんですね。これは表紙と同じアングルで、作品としてもクオリティーが高い。では、宮沢の2つ目ですが、私はフィリップ・ジョンソンの「グラスハウス」が好きです。
これは、見学ツアーに申し込んで見たのですが、タイミングを見計らってダッシュで写真を外に撮りに行って…。変な奴がいるぞ、みたいな目で見られながら(笑)。
──その時間のなさも良かったのかもしれませんよ。建物が逆光になって、黒くつぶれている。そのために、緑と黒、空の対比が鮮やか。表紙の「GA」という黒いロゴと建物の黒がマッチして、作品性が高いと思います。
そんなことまでは考えませんでしたが(笑)。
弾丸旅行で見た「黄昏の都城」
次は私ですね。私は菊竹清訓さんの「都城市民会館」です。
──壊される直前ですね。夕景に物語性を感じます。
これは壊されるという情報を聞いて、なんとしても見たいと思い、1泊2日の宮崎・大分弾丸旅行を計画しました。いろいろ見たので、結果的に夕方になってしまったのですが、見ることができて本当によかったです。
──では、宮沢の3つ目。レーモンドの「群馬県立音楽堂」です。
これは、地元の中学生の吹奏楽コンクールの日でした。
──そう、表紙の写真と全く同じアングルでありながら、現在の方はいきいきと使われている姿を伝えている。報道写真として素晴らしいと思いますよ。賞が取れそう。では、関口さん、最後の1つを。
中村拓志さんの「狭山湖畔霊園礼拝堂」です。これまで撮った中では最高のバランスじゃないかと。本が、この建築の為に作られたコンセプトブックというのが高ポイントです。
日本語名は「ジャケ旅」に決定
──ところで、これは前にも関口さんに言ったと思うのですが、「Archibooks Travel」という名前が覚えづらいですよ。世の中にもっと浸透させるには、日本語でキャッチーな名前をつけた方が。
そうなんですよね。もともと外国の人にも見てもらいたいと思ってつけたハッシュタグ(#nyd_archibookstravel )なので…。いい名前はないでしょうか。
──実は、今回の記事の見出しをつけるために、いくつか考えてきました。「ジャケ撮り」「ジャケ旅」「建ジャケ巡礼」…。
あ、ジャケ旅はいいですね。本だけじゃなく、CD・レコードとか広がりそうで。「建ジャケ巡礼」も、宮沢さん達の「建築巡礼」に似ていて捨てがたいですが(笑)。
──これは関口さん以外の人が同じことをやってインスタに上げてもいいんですか。
もちろんです。
──じゃあ、今後はジャケ旅のハッシュタグ(#ジャケ旅)を付けて、投稿してください。
分かりました。まずは100件を目指して頑張ります!
関口 奈央子(せきぐちなおこ)
東京・神保町にある建築専門書店「南洋堂書店」のスタッフ。2020年で勤務16年目になる。「DOCOMOMO Japan News Letter(会報誌)」編集委員。南洋堂書店ウェブ内のコラム「南洋堂日和」で、本と日常を結びつけてつづっている。南洋堂書店ウェブショップはこちら。インスタグラムは、同サイトのカメラマークをクリックするか、こちらから。