建築系雑誌読み比べ!04:住宅特集、住宅建築、建築知識ビルダーズ─「建築の日本」を醸成

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 自粛期間向け・短期集中連載「建築系雑誌読み比べ!」の第4回である。3冊×4回の最終回となる。今回レビューするのは「住宅特集」、「住宅建築」、「建築知識ビルダーズ」の3冊だ。

 これを書いているのは前・日経アーキテクチュア編集長で今はフリーの宮沢である。建築系雑誌12冊を3冊ずつグルーピングし、(1)ほかの雑誌にない独自性、(2)なるほど!と感心した伝え方、(3)編集部へのエールの3項目でレビューしていく。既に公開している3回は下記だ。

建築系雑誌読み比べ!01:建築知識、Casa BRUTUS、日経アーキ─それぞれの社会性を投影
建築系雑誌読み比べ!02:新建築、GA、商店建築─「新作紹介」の葛藤
建築系雑誌読み比べ!03:a+u、建築技術、ディテール─「技術」という宝の山

 今回の3冊をくくるテーマは分かりやすい。「住宅」である。まずは「住宅特集」から見ていこう。

「特集」という戦略的誌名、「住宅特集」

 「住宅特集」は、編集長の西牧厚子さんから事前に「緊張で震えます」「甘口希望!」というメッセージをいただいていた(西牧さん、ばらしてすみません!)。でも、きっとこれは「押すな、絶対に押すなよ(=押せ!)」という意味だと思うので、ビシビシと行きたい。

(1)ほかの雑誌にない独自性

 「住宅特集」、正式名は「新建築 住宅特集」。私が1990年に日経アーキテクチュアに配属されたときにはこの雑誌は既にあり、「何て変な名前!」と思った。定期誌なのに「新建築」の「特集」なんて…。だが、30年たった今は、このスピンオフ的な名前こそがこの雑誌の独自性を、さらには「この雑誌が建築界に必要とされる理由」を物語っていると思う。

 住宅特集は1985年5月に季刊誌として創刊。1年後の1986年5月から月刊誌となった。それ以前の「新建築」をながめると、だいたい年に2回程度、「住宅特集」という「特集記事」を掲載していた。80年代半ばになって、建築家が設計した戸建て住宅が増え、これを集めたものをまず季刊化し、売れ行きがよかったので月刊化したのだろう。

 定期化するに当たり、「住宅特集」という名前には社内でも突っ込みがいろいろあったはずだ。「新住宅はどう?」「いやいや、やるなら住宅批評だろう」(いずれも想像)。そこを押し切って「住宅特集」という名前にした当時の意図を聞いてみたいものだが、結果的には、それは素晴らしい判断だったと思う。一時期、表紙が「jt」というアルファベットロゴで飾られている時代があった。編集部に迷いがあったのかもしれないが、それは私が考えるこの雑誌の理念とは違う。案の定、もとに戻った。「住宅特集」はやっぱり「住宅特集」だ。

 2020年4月号を見ていこう。4月号の特集は「都市住宅2020 敷地の力を引き出す」。同誌はすでに5月号(特集は「土間・縁側」)が発売になっているが、住宅特集は号による当たりはずれがほとんどないので、他誌と一緒に4月7日に書店で買った4月号を見ていく。

 「当たりはずれがない」。良く言えばアベレージが高い。悪く言えば、意外性がない。それがこの雑誌の特色であり、「新建築 住宅特集」というネーミングの成果でもある。どういうことか。

 この号には、さまざまなアプローチで「敷地の力を引き出す」ことに成功した住宅17件が掲載されている。もし日経アーキテクチュアで若手記者がこの企画を出したら、「そんなの当たり前だ」と突き返される。「敷地に逆らう」住宅だったら珍しい。せめて「変形敷地・狭小敷地を克服する」か。

 何が言いたいかというと、「敷地の力を引き出す」というお題は大抵の住宅に当てはまってしまう。編集者の立場で言うと、この緩やかなくくりで、掲載する・しないを判断するのは極めて難しい。

 おそらく、「住宅特集」に掲載された住宅の多くは、それを第一ハードルとして、本当のハードルは、「住宅」として同誌が押すものかどうかで選ばれていると思う。では、「住宅」として同誌が押すのは何かというと、いつか兄貴分である「新建築」に載る才能があるかどうか、というところが大きいのではないか。あくまで推測だが。

(誌面スケッチ:宮沢洋)

 実際、現在、「新建築」誌を飾る大御所、中堅の建築家たちは、若い頃に「住宅特集」で名前を知られるようになった人がほとんどだ。

 正直、私はこの見極め能力に欠けていた。住宅の内覧会に行って、この家は機能的かどうかとか、ある記事のテーマにはまるかどうかの判断はできる。しかし、建築主の趣味嗜好が色濃く反映される個人住宅を見て、この建築家は将来伸びそうかを予測するのは難しい。若い頃にツバをつけ損なってきた建築家が何人もいる。

 そういうプロ野球のスカウトみたいな能力が「住宅特集」の編集者には求められる(たぶん)。そのスカウトマンの勧誘文句は、「あなたはいつか新建築に載る」なのだ(たぶん)。だから誌名が「jt」であってはならず、「いつかは新建築」を目指す「住宅特集」なのだ。

 「有能な若手を発掘して育て、新建築に上げる」。そういう養成学校のような任務を負いながら、事業として成立しているのがすごい。茶化しているわけではなく、本当にすごいと思う。

 日経アーキテクチュア在籍時に、プリツカー賞選考のキーパーソンであるマーサ・ソーン氏に「日本人のプリツカー賞受賞者が多いのはなぜか」を寄稿してもらったことがある。

プリツカー賞選考のキーパーソンが見た日本建築界の実力 (←有料記事です)

 このとき、彼女はこんなことを指摘していた。

 「日本にプリツカー賞の受賞者が多い理由を他に探ると、日本には昔から、建築に関する高品質な出版物があることが挙げられる。『新建築』や『GA』などの出版物が長年にわたり、才能ある建築家の優れた仕事を美しい写真とともに、英語など日本語以外の言語でも紹介してきた。それによって日本の建築文化が世界に知られるところとなった。世界中の設計事務所や図書館の本棚に、これら日本の建築雑誌が並ぶ」(日経クロステック2019年5月20日公開の記事から引用)

 彼女が誌名として挙げているのは「新建築」や「GA」だが、多くの建築家がメディアとの付き合いを初めて経験するのは「住宅特集」だ。「新建築」に載るような規模の建築を設計できるようになるまで、住宅特集が目をかけ続けてくれることで建築家としてのモチベーションが保てる。極論をいえば、日本にプリツカー賞受賞者が多い理由の1つは「住宅特集→新建築」という養成システムがあるからではないか。その弊害もあるにはあるが、それは最後に…。

(2)なるほど!と感心した伝え方

 初期からある欄だとは思うが、巻末の「建築家プロフィール」がいい。この欄はこの雑誌が基本「B to B」でありながら、一部「B to C」を含んで事業として成立していることを示している。なぜそう思うかというと、掲載された住宅の設計者の住所と電話番号が載っている。家を建てたいと思っている人は、いちいちWEBで調べなくてもいい。編集部の助言かどうかは分からないが、設計者の顔写真も、昔に比べるとにこやかになってきた。私でも「ちょっと相談してみようか」と思ってしまう、フレンドリーな誌面だ。

 若手~中堅建築家の住宅が多い同誌だが、4月号には安藤忠雄氏が設計した住宅「マンハッタンのペントハウスⅢ」が載っている。巻末の「建築家プロフィール」欄を見ると、安藤事務所も住所と電話番号が載っている。世界のANDOも、載せるからには若手と同列。特別扱いなしなのだ。

 今回、じっくり読んで気付いたのだが、建築家プロフィールの前のページに、「施工会社&現場監督紹介」という欄があった。こちらも電話番号付き。これは設計者にとって重要な情報だし、現場監督のモチベーションも高める。なるほどなあ。こういう“最後のひと手間”のページが雑誌の価値を大きく上げると思う。

(3)編集部へのエール

 住宅特集、いい雑誌だと思います。私も半年に一度くらい、まとめて読んでました。最新号をガツガツ読まなくても罪悪感がないので。

 冒頭に「意外性がない」と書きましたが、意外な企画を求めているわけではなく、毎号のアベレージが高いことへのやっかみです。「これはいつか〇〇特集に使えそう」というネタが号に1つ~2つ見つかります。おそらく雑誌やテレビなど、住宅系のネタ探しで御誌を情報源の1つにしているところは多いと思います。複数媒体にコンテンツを提供する通信社みたいな形態にすればいいのでは、とすら思います。

 「住宅特集→新建築」という強固な建築家養成システムはもはや揺るぎようがないでしょう。なので、まだ右も左も分からない若手建築家たちには、「ほかのメディアに載っても全然問題ないのよ」と優しく教えてあげてください! それと、「メディアによって進め方が全く違うからね」も付け加えておいてもらえると助かります。

 西牧さん、辛口の気持ちで書きましたが、甘かったですか? 

■「新建築 住宅特集」2020年4月号
発行:新建築社、編集長:西牧厚子、月刊、定価2420円(税込み)、年間購読(12冊):2万9040円
https://shinkenchiku.online/product-cat/jutakutokushu/

住宅のアナザーフィールド、「住宅建築」

 「住宅建築」は、「住宅特集」と同じく建築家が設計した個人住宅を主に扱っているが、掲載する住宅のタイプがかなり異なる。「住宅建築」が取り上げるのは、ざっくり言うと、「奇をてらわず、正攻法で心地よい住宅」。創刊は1975年。つまり、1985年創刊の「住宅特集」の10年前からあるわけなので、後発の「住宅特集」の方が「住宅建築」と異なる領域を切り開いていった、と言うのが正しいのかもしれない。

 書いていて両誌の区別がつきづらいので、住宅建築は「住建」と略そう。

 私も日経アーキテクチュア時代は、住宅特集寄りの「いろいろ分かりやすく工夫してみました」アプローチの住宅を多く取り上げていたので、住建を読むと、今も反省を強いられている気分になる。

 同誌も6月号(特集「田中敏溥の仕事」)が既に出ているが、4月号の方が「住建らしさ」が語りやすいので、住建4月号で行く。

(1)ほかの雑誌にない独自性

 2020年4月号の特集は「骨格とディテール」だ。特集冒頭の20ページは、高須賀晋氏が設計した木造住宅が並ぶ。

 失礼ながら、「えっ、高須賀晋さんってご存命だったのですか?」と思った。高須賀氏といえば、1980年に日本建築学会賞を受賞した「生闘學舎」が頭に浮かぶ。それから40年、今おいくつなんだろう、と思いつつページをめくっていくと、特集の14ページ目に高須賀氏のプロフィルがあり、2010年に既に亡くなられていることが分かる。

 そこで、改めて頭に戻ってもう一度、見返してみたが、どこにもそうした説明はない。

 第1回の「建築知識」のところでも似たようなことを書いたが、私だったら特集の前書きに、「高須賀晋氏が亡くなって今年で10年。今こそ〇〇を高須賀氏の残した住宅に学ぼう」といった理由付けを書くところだ。が、住建はそんなことはしない。特集の冒頭から当たり前のように、住宅写真や高須賀氏のコメント(過去の書籍などの引用)が並ぶ。

 この雑誌の読者は、高須賀氏が故人であることは当然知っているということなのか、生きている人と思って読んでほしいのか。そこのところは分からないが、とにかく「いいものはいいのだ」という感じで特集が始まる。実際、私は高須賀氏のコメント(下記)を読んで、「かっこいい!会ってみたい」と思ってしまった。

 「納まりを練りに練り、あるいはまた悪戦苦闘して出来たものでも、見る人にそれを意識させてはいけないと思う。ごく自然に見えなければならない。それを意識させたら見る人は肩が凝ってしまう」

 これは高須賀氏の言葉であるが、私が思う「住建が取り上げる住宅のイメージ」そのままだ。

 そしてこれは、私がいた日経アーキテクチュアという実務情報誌では扱いがとても難しいところであった。こういう住宅は書くことがないのである。いい写真と図面で誌面を埋めることはできる。しかし、自然に見える設計の工夫を書くのは難しいし、そもそもそういう住宅を目指す設計者は、その苦労をとうとうと語ってくれない。だから、編集者の命である「見出し」が付けにくい。実務情報誌で「なぜだか気持ちいい」という見出しを付けるわけにはいかない。

 でも、自分で住むなら正直、こっちのタイプの家に住みたい。ゆったりした土地があれば、の夢物語ではあるが…。こういう住宅の世界があるんだということを、住建は今も奇をてらうことなく教え続けてくれる。

(2)なるほど!と感心した伝え方

 住建にも巻末に、住宅特集と同じような「設計者・著者」という欄がある。連絡先、顔写真付きだ。住建には、「写真家」という欄もあり、竣工写真を頼みやすい。もちろん、写真家のモチベーションを高める意図もあるのだろう。

 「設計者・著者」という欄をじっくり読んで驚いた。特集「骨格とディテール」には、高須賀氏のページの後に、約70ページにわたって木造住宅が並ぶ。どれも高須賀氏の設計かと見まがうようなシブい木造なのだが、その設計者の多くが若い!

 下川徹(1983年生まれ)、唯島友亮(1983年生まれ)、岩瀬卓也(1982年生まれ)、前田真佑(1977年生まれ)、吉村理(1975年生まれ)。その若さでよくこんな住宅を…。

 私だったら、各記事の最後に「注目株!」みたいなキャッチで設計者のプロフィルを載せるところだが、そんなミーハーなことをしないところも住建らしさか。

(3)編集部へのエール

 今回じっくり読んで、若手発掘にも意欲的であることが分かりました。いつか、こういう若手のなかからプリツカー賞を取る建築家が出てくるといいですね。世界がそういう方向を求めているような気もしています。

 一方で、6月号の「追悼・長谷川堯さん」のような振り返りものも、さすが住建!と思います。

 個人的な要望ですが、住建にはじっくり読みたい記事が多いので、もう少し本文級数を大きくしていただけるとありがたいです。

■「住宅建築」2020年4月号
発行:建築資料研究社、編集所:建築思潮研究所(代表:小泉淳子)、隔月刊、定価2640円(税込み)、年間購読(6冊):1万5840円
https://jyuken.site/

建築家住宅を下支え?「建築知識ビルダーズ」

 さて、いよいよ12冊目。ラストである。

 住宅雑誌といえば、3冊目は「モダンリビング」(ハースト婦人画報社)を取り上げるべきかもしれないが、今回は「こんな雑誌もあるんだよ」ということを知ってもらいたくて、「建築知識ビルダーズ」にした。モダンリビングの方、ごめんなさい。お詫びに、モダンリビングの公式サイトはこちら

(1)ほかの雑誌にない独自性

 さて、「建築知識ビルダーズ」である。実は私も、じっくり読んだのは初めてだ。今回取り上げようと思ったのは、表紙に「おかげさまで10周年」と書いてあったからである。すごい、そんなに続いていたのか!

 創刊は2010年5月。最新号はNo.40(2020年2月27日発行)。どこにも発行頻度は書かれておらず、表紙に「エクスナレッジムック」とあるので定期雑誌ではない。だが、次号の予告を見ると「No.41は2020年5月27日発売予定!」とあるので、およそ3カ月おきのペース。年4冊×10年=40冊という計算にも合うので、「ほぼ季刊」と言ってよさそうだ。

 誌名から想像されるメイン読者は「工務店経営者」だ。工務店と言えば、日経アーキテクチュアの兄弟誌に「日経ホームビルダー」があって、私はその記事づくりの大変さを隣でずっと見ていたので、「建築知識ビルダーズ」が10年前に創刊されたとき、「エクスナレッジさん、工務店は甘くないですぜ、いつまで続きますことやら」と思った。だが、気付けば創刊10周年。見くびっていたことをまずは謝らなければならない。

 今回ちゃんと読んでみて、続いてきた理由が理解できた。この雑誌は、「工務店経営者」というB to Bが主軸ではあるが、一般ユーザーもターゲットに含んだB to C雑誌でもある。誌面のおしゃれ度、分かりやすそうに見える度が、工務店経営者だけを狙ったものではない。

 この雑誌を一般ユーザーが書店でどれだけ買うかは分からないが、掲載された工務店が大量にこの雑誌を買って、得意先に撒く、というニーズが誌面から想像される。

 No.40の特集タイトルは「スーパー工務店は全部やっている! 完全無欠の家」。この「スーパー工務店」というフレーズが、一般ユーザーを意識している証拠だ。専門家に向けてはちょっと気恥ずかしいけれど(仮に日経アーキテクチュアで「スーパー建築家は…」というタイトルを付けたら建築家に怒られる)、一般に向けては「すごい会社」であることが伝わりやすい。

 書店の書棚を見て笑ってしまったのだが、この「スーパー工務店」というフレーズは、No.30の特集「スーパー工務店のスゴ技30」から最新号まで2年以上ずっと続いている。グーグル画像検索で「建築知識ビルダーズ スーパー工務店」と入れてみると、こんな感じだ。

 当たったら逃さない、さすがエクスナレッジの社風! 

 笑ってはしまったものの、「スーパー工務店」というフレーズは、街の工務店のレベルにもピンからキリまでいろいろあるということをユーザーに伝える意味で、とても良いフレーズだ。どうせなら、流行語大賞をもらえるくらいまで浸透させてほしい。

(2)なるほど!と感心した伝え方

 一般ユーザーを意識していることもあって、図が分かりやすくできている。さすが建築基準法を「幻獣」で図解してしまう会社だ。

 びっくりしたのは「小泉誠デザイン オリジナルフレーム わくわく原寸型紙」という「とじ込み」のページ。開くとA2判くらいの大きな紙に、型紙が原寸で印刷されていて楽しい。こんな遊びにお金をかけられるセンスと勇気がうらやましい!

 そして、この号では、私が日経アーキテクチュア時代に連載を担当していた前真之・東京大学准教授(連載名は「エコハウスのウソ」)が、「エコハウス未来予想図」という記事を寄稿しているではないか!

 これも「絵で見て分かる」風のつくりになっている。似た記事を担当していた人間として、こんな分かりやすそうな図をつくるのが大変であることがよく分かる。10年続くだけあって、なかなかよくできた雑誌だ。

(3)編集部へのエール

 「スーパー工務店」という名フレーズがあることに今ごろ気付いてすみません。工務店のモチベーションを高めることは住宅系の建築家たちを元気づけることにもつながります。こんな状況なので、工務店業界をさらに盛り上げる企画を期待しています。

 それと、巻末に「世界のいろいろな建物」というイラスト解説コラムが! これ、私も描けます。ぜひいつかお声掛けを(笑)。

■「建築知識ビルダーズ」No.40 2020年春号
発行:エクスナレッジ、編集長:木藤阿由子、ムック、定価1980円(税込み)
http://xknowledge-books.jp/ipscs-book/BooksApp;jsessionid=DC674E55944CC833B2CC98053837EA9A?act=list&category=4&mode=1&key=102

12冊を読み終えて

 ふう、宣言した12冊をなんとか書き終えた。読むのは楽しいが、書くのは意外に大変で、執筆に丸1週間使ってしまった…。

 12冊を読み比べて、各誌の方向性が大きくは重なっていないことを改めて認識した。そのうえで、「続く雑誌には続けるための工夫と努力がある」ということが分かり、今さらながら勉強になった。

 先のマーサ・ソーン氏のコメントにもあるように、日本の建築・住宅系メディアの多さは世界的に見ると特異なことだという指摘をよく聞く。さまざまな方向性をフォローするメディアがあるから、新建築やGAのような新作メディアは、諸々の情報を脇に置いて、ピュアに作品性を志向することができる。2018年に森美術館で「建築の日本」展という展覧会が開催されたが(「日本の建築」ではなく「建築の日本」!)、そんなすごいタイトルが付けられるのは、建築・住宅系メディアの豊饒さがベースにあると思う。

 コロナでメディアの世界も変わるだろう。また1~2年後に、どう変わったのか、変わらないのかを読み比べてみよう。

 第1回~3回をまだ読んでいない方はこちらへ。

建築系雑誌読み比べ!01:建築知識、Casa BRUTUS、日経アーキ─それぞれの社会性を投影
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