最強の道後建築案内08:いよいよ総まとめ、長谷川逸子から伊東豊雄まで「松山28選」_BUNGA NET

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 いよいよ最終回である。「今年見たものは今年のうちに」ということで、まだ取り上げていない建築を大晦日に駆け込みで紹介する。

 まずは、長谷川逸子氏が設計した3件。

(写真:宮沢洋)

 「ミウラート・ヴィレッジ(三浦美術館)」は、三浦工業を中心とする三浦グループの敷地の一角にある民間美術館。車でないと行きづらい場所だが、長谷川氏のランドスケープづくりのうまさがよく分かる施設で、行く価値あり。三浦工業の創業者、故三浦保氏自作の陶板画や国内外の芸術家の作品を屋外展示しており、館内では企画展を開催している。

◆ミウラート・ヴィレッジ(三浦美術館)
松山市堀江町1165−1
設計:長谷川逸子
竣工:1998年
参考サイト:https://www.miuraz.co.jp/miurart/

 市の中心部にあって外観がひときわ目立つのが「菅井内科」。「坂の上の雲ミュージアム」のすぐそばだ。通りから外観を見るだけで楽しい。敷地に入って見るともっと楽しい(らしい)。子どもの病院嫌いが和らぎそうだ。 

◆菅井内科
松山市一番町3−3−3
設計:長谷川逸子
竣工:1986年

 長谷川逸子氏が松山市で設計を手掛けるようになったきっかけは、1979年に竣工した「徳丸小児科」だという。それは現存しないが(見たい方はこちら)、新しい建物も長谷川氏の設計だ。おお、これはこれですごい。

◆徳丸小児科
松山市古川北3丁目4−15
設計:長谷川逸子
竣工:2005年
参考サイト:https://www.kadoyagumi.com/works/works-900

 ダブルスキンの間にびっしりとツル植物が繁茂している。医院の方に確認したが、植物は本物であるという。確かに、よく見ると、点滴潅水の装置が機能していた。

丹下健三自身による名作「愛媛県民館」の建て替え

 現存しない名建築ということでいえば、丹下健三の「愛媛県民館」(1953年)。

「愛媛県民館」の断面模型。2021年夏に文化庁国立近現代建築資料館で行われた「丹下健三 1938-1970」で撮影

 同じ丹下健三の設計で建て替えられた「愛媛県県民会館」は、こうなった。

◆愛媛県県民会館
松山市道後町2-5-1
設計:丹下健三
竣工:1985年

「ホテル奥道後」は休館日で涙

 マッチョな60年代モダニズムが好きな人は、ちょっと山奥にはなるが「ホテル奥道後(現・奥道後壱湯の守)」も見逃せない。設計は西脇市民会館(1962年)や大阪万博協会本部ビル(1967年)などを設計した根津耕一郎氏。「東の黒川紀章、西の根津耕一郎」と称された建築家だ。

◆ホテル奥道後(現・奥道後壱湯の守)
松山市末町267
設計:根津耕一郎
竣工:1967年
参考サイト:https://www.okudogo.co.jp/

 私が行った日はまさかの点検休館日で、ラウンジだけちら見させてもらった。レトロ・フューチャー!

伊丹十三と松山銘菓「一六タルト」の関係性

 建築好きでない人と行っても一緒に楽しめるのが「伊丹十三記念館」だ。設計は中村好文氏。建築も味わいがあるけれど、とにかく展示内容が面白くて見入ってしまう。

◆伊丹十三記念館
松山市東石井1−6−10
設計:中村好文
竣工:2007年
参考サイト:https://itami-kinenkan.jp/information/index.html

 伊丹十三記念館を見に行ったら、北に少し歩いて、この建物(下の写真の左)もちら見しておきたい。

◆松山ITM本社ビル
松山市東石井1丁目7−13
設計:伊東豊雄
竣工:1993年
参考サイト:http://www.toyo-ito.co.jp/WWW/Project_Descript/1990-/1990-p_08/1990-p_08_j.html

 同館の設立に協力したITMグループの本社ビルだ。ITM(ICHIROKU TOTAL MIXTURE)グループは、株式会社一六本舗(菓子製造販売)、株式会社一六(レストラン)などを経営する会社。そうか、松山銘菓の「一六(いちろく)タルト」の会社だから外壁が曲面なのか、と勝手に納得。

 ふうっ、やっと書き終わった。いかがでしたか?

 今回紹介した建築を黄色ピンで加えて、道後・松山マップが完成!(松山辺りを拡大して見てください)

 この連載で紹介した建築は、地図を数えたら28件あった。もちろん4泊5日では行き切れなかった心残りもあるのだが、皆さんが旅の計画を立てる参考にはなるのではないか。

 各回のタイトルにリンクを張っておくので、ご参考まで。(宮沢洋)

【最強の道後建築案内/掲載リスト】
01:私が今、道後温泉にいる理由と、初めての松山城
02:温泉街の顔、復元駅舎から黒川紀章の現代和風まで徒歩散策
03:道後温泉本館の“魅せる保存修理”を可能にした「3つの奇跡」
04:秘めた迷宮空間にサラブレッド・木子七郎の反骨精神を見た
05:伝説の地方建築家、松村正恒の少し意外なクール系建築
06:長谷部鋭吉から「myu terrace」まで“日建大阪”を松山で知る
07:安藤忠雄氏の知る人ぞ知る傑作「瀬戸内リトリート青凪」を見た!
08:いよいよ総まとめ、長谷川逸子から伊東豊雄まで「松山27選」