建築を楽しむことは、建築を学んでいなくてもできる。建築を学んだ人も、学校では教わらない方法で楽しむことができる。要は、建築を楽しむ方法は無限にある。私(宮沢)はそう思っている。今回から始まる「建築の愛し方」では、「なるほど、そんな方法があったのか!」「まさかそこまで!」と私が強く惹かれた建築LOVERたちを取り上げ、ここでしか読めない話を聞く。第1回は、建設会社設計部に勤務する傍ら、趣味の「折り紙建築」で驚異的な作品を発表している五十嵐暁浩氏(新潟市在住)に、オンラインで話を聞いた。
──五十嵐さんの折り紙建築「東海大学湘南キャンパス1号館」(設計:山田守)をFacebookで見て、本当にびっくりしました。今までの折り紙建築は、1つの折り目で「2つ折り」したものを開くと立体が現れるイメージでしたが、あれは別の方向から紙がやってきて、合体しますね。
はい。あれは私が考案した「3つ折りタイプ」という手法です。紙は1枚ですが、台紙を折る箇所が1箇所ではなく、複数箇所になります。
──五十嵐オリジナルなんですね。世界初?
そうかもしれません。そもそも折り紙建築をやっている人が少ないですから(笑)。
折り紙建築を本格的にやり始めて13年ほどになりますが、始めてから割とすぐの頃に、この方法をやってみました。香山壽夫さんが設計された「新潟ふるさと村アピール館」が最初だったと思います。切妻屋根に円筒が刺さっているような形を表現するのに、この方法をひねり出しました。
──「東京文化会館」(設計:前川國男)の特徴的な庇も、3つ折りならではの表現ですね。3つ折りの仕組みを説明する動画も素晴らしいです。
ありがとうございます。実は、あの動画は結果的にできてしまうものなんです。もともと折り紙建築を設計する過程でJW-CADとスケッチアップ(3Dデザインソフト)を使い、本当に折れるかを検討しています。そうしないと紙がたくさん無駄になってしまいますから(笑)。
動画は検討用のデータをスケッチアップで加工してつくったものです。「本当に1枚の紙でできるでしょう」ということを伝えたくて、最近やり始めました。
──3つ折りだけでなく、基本の2つ折りの作品も素晴らしいです。特に、磯崎新さんの都庁コンペ案はしぶい!
──私も以前、「建築巡礼」のイラストの中で、ヤマトインターナショナル(設計:原広司)の折り紙建築をつくってみたことがあります。
知っていますよ。
──初めてつくったにしてはなかなかの出来だと思っていたのですが、今回、私のリクエストでつくっていただいたヤマトインターナショナルを見て、クオリティーの違いに衝撃を受けました。
いつもはA4判のケント紙でつくるのですが、実物の建築のディテールが細かいので、それらを表現しようとしたらA3判の紙になってしまいました.
──私は20cm角くらいの紙に、手描きでつくったので(笑)。
でも、宮沢さんの作品も味がありますよ。
──ありがとうございます。五十嵐さんは今年の5月から、個人のFacebookだけでなく、ドコモモのFacebookギャラリー「The Gallery of MOMO Origamic Architecture」でも発表していますね。
はい。私の師匠である木原隆明さんや、その師匠である茶谷正洋さんの作品も含めて、来年の秋ごろまでに週に1作品、計約70作品を公開していく予定です。
これは、コロナの影響で来年に延びたドコモモの東京大会へのつなぎの企画です。東京大会では、実物の折り紙建築の展示会を予定しています。(インタビュー:宮沢洋)
※五十嵐氏が折り紙建築の世界に足を踏み入れた理由や、折り紙建築の楽しさは次回に(後編の記事はこちら)。
※ドコモモのFacebookギャラリーはこちら→「The Gallery of MOMO Origamic Architecture」。