フジモリ先生との共著『モダニズム建築とは何か』、自信を持ってお薦めする理由は「疾走感」と「強い軸」

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 藤森照信先生と私(宮沢洋)の共著『画文でわかる モダニズム建築とは何か』が彰国社から発刊される。大手書店には今週末あたりから並びはじめ、アマゾンではGW終盤から発送が始まるという。

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『画文でわかる モダニズム建築とは何か』
文:藤森照信・画:宮沢洋。彰国社、2022年5月10日、A5判、128ページ、特色2色刷、1900円+税

 発売になる前から自分で褒めるとうさんくさいと思われるかもしれないが、この本は間違いなく面白い。「傑作」と言ってもいい。なぜなら、もともとあった藤森先生の原作に私が感動し、イラスト化を提案したものだからだ。以下、そんないきさつを書いた同書の「はじめに」を転載する。

はじめに:『人類と建築の歴史』の衝撃

 本書は、建築史家・建築家である藤森照信氏の著作『人類と建築の歴史』(ちくまプリマー新書/筑摩書房/2005年発刊)の第6章「二十世紀モダニズム」と第5章の一部を、画文家の宮沢洋がイラスト化し、藤森氏へのインタビューなどを加えてまとめたものである。

 この「はじめに」を書いているのは、イラスト担当の宮沢である。この企画は、私が藤森氏と出版社(彰国社)に持ちかけて始まった。

 宮沢は現在、建築分野を主に活動しているものの、建築の専門的な教育を受けていない。理系ですらない。1990年に早稲田大学政治経済学部を出て、日経BPという出版社に就職。たまたま『日経アーキテクチュア』という建築専門雑誌に配属された。そこで建築の面白さに目覚め、30年間、国内外のさまざまな建築を取材した。そして、この面白さを今度は一般の人にも伝えたいと考え、得意としていたイラストを武器に、「画文家」として独立した。

 何を言いたいのかというと、藤森氏の『人類と建築の歴史』は、画文家として独立する際に、最も強く「描きたい」と思った題材だったのである。

 この本を知ったのは、発刊から10年ほどたった2015年ごろだった。読んで衝撃を受けた。藤森氏の著作の面白さは、有名な「建築探偵」シリーズをはじめ、何冊も読んで知っていたつもりだった、この本はそれらとはちょっと違う。人類史の起源から現代建築までを1つの軸の中で語る壮大な読み物なのだ。それでも、いつもの藤森氏のように筆致は軽く、1日あれば読める。

 その中でも強く心を惹かれたのが、書籍の最終章である第6章「二十世紀モダニズム」だった。1日で読める全6章の書籍の中の、たった1章が「モダニズム建築」なのである。たぶん、原書の第6章は20〜30分で読める。そのわずかなボリュームの中で、モダニズム建築の誕生から拡大、拡散までを語るわけだから、疾走感がすごい。それでいて全体を貫く軸はしっかりしていて、「なるほど!」と腑に落ちる(それが何なのかは本書を読んでほしい)。

 ああ、これをイラスト化したい。多くの人に読んでほしい。

 そんな思いにかられ、藤森氏や編集担当のK氏に提案したところ、快諾してくれた。素晴らしい原作のイラスト化は、実に楽しい作業であった。

 素晴らしい原作だが、実は、読んでいて1点引っかかっていたことがあった。その点については、藤森氏にインタビューでぶつけ、これも「なるほど!」という解説をいただくことができた。インタビューを先に読んでから本編を読むのも楽しいかもしれない。

 本来、謝辞はあとがきに書くものだが、この一風変わった企画を快諾してくれた筑摩書房にもこの場を借りて深くお礼を申し上げたい。                 宮沢洋

「疾走感」と「強い軸」

 …と、これが「はじめに」の全文である。原作の魅力は、この中でも書いているように、「疾走感」と「全体を貫く軸」だ。イラストは、この疾走感を妨げないように、私の個人的感想をごちゃごちゃ描き込むことは避け、とにかく個々の建築のイラストをかっこよく描くことに努めた。

 印刷方法は「特色2色刷り」というもので、つまり2回刷るだけでできるローコストな印刷手法だ(通常のカラー印刷は4回刷る)。だが、これがデザイナーさんの色選びもあって、めちゃめちゃかっこいい。けちった感は全くない。

 手にとると気付くと思うが、特色の色の組み合わせが章の変わり目で2回変わる。これは、ページ割りの段階でかなり頭を使う(8ページの倍数の位置でないと色が切り替えられない)。編集上の高等テクニックである。そんな裏側の工夫も感じつつ、「疾走感」を味わってほしい。

 そして、もう1つの魅力が「全体を貫く軸」。この軸が本当に強い。その強さを表すために、藤森先生が提示した軸のイメージを見開きで描いた。

 なんのことなのかは、本書を手にとって読んでみてほしい。きっと「そういうことか!」と、代金(1900円+税)の元をとった気持ちになる。

上の絵のヒントは書籍の帯に

 原作にはない藤森先生へのインタビュー(聞き手は私)もすごく面白かった。あまりに盛り上がって、書籍には半分くらいしか入れられなかったので、残りはおいおいこのサイトで出していこうかと思っている。

 まずはリアル書店かネット書店へ。(宮沢洋)

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