速報時にあやふやな書き方をしていた3か所に、森ビルから補足説明が届いたので、加筆した。青太字は森ビルの補足説明、黒太字はそれに対する宮沢の追記。特に、「T-デッキ」についての補足は専門家には貴重な情報だ。(ここまで2023年10月19日に加筆、以下は2023年10月2日の速報)
「巨大建築に抗議する」という論考を、建築評論家の神代雄一郎(こうじろゆういちろう、1922~2000年)が『新建築』誌上で発表したのは1974年9月。それからしばらく“巨大建築論争”と呼ばれる意見の応酬が続いた。来年(2024年)は「巨大建築論争50周年」となる。どこかの媒体からそういう原稿依頼があったらすぐに書けるように、最新の超高層ビルを見てきた。10月6日(金)に開業する「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」である。


10月2日に内覧会があり、それに参加した。好き嫌いは置いておくとして、昨今の超高層ビルの中ではなかなか頑張っているビルだなという印象を持った。設計はこういう面々。
設計 :森ビル
施工 :鹿島
デザイン:重松象平(OMA)
歩行者デッキ:Ney & Partners
外装(ランドスケープ含む)照明:L’Observatoire International
内装(共用部)照明:Ark Light Design
内装(ホテル)照明:Light iQ
「T-マーケット」(B2階)商環境デザイン:片山正通(Wonderwall®️)
商業共用部デザイン(2階~5階、7階):大野力(sinato)
ホテルインテリアデザイン:Space Copenhagen
すごいな、森ビルって自社でこの規模の超高層を設計できるようになったのか…。まず、それに驚く。ちなみに開業を待つ「麻布台ヒルズ」の方は、「基本設計 : 森ビル、山下設計/実施設計 : 森ビル、山下設計、 大林組」だ。デザイナー は「外装:Pelli Clarke & Partners」「低層部:Heatherwick Studio」「商業空間(エントランス):藤本壮介建築設計事務所 」など。

今回は設計者の詳しい話を聞くことができなかったので、以下は備忘録程度の情報である。(OMAの重松象平氏が来ていたようだが、プレスツアーが締め切りで参加できず…)


森ビル補足①:ねじれ面の形状は確かに3次元ではございますが、HPシェルと言ってしまうとシェル構造(=曲面方向で応力を受けている)と思われる方もいるかもしれないので、厳密には適切ではないため補足させていただければと思います。→上下ユニット間で少しずつ持ち出し・セットバックを行い、平面的にも少しずつ角度を変えて3次元のねじれを作っております。
確かに「シェル」と呼ぶと面で力を伝えていることになってしまうので、ここでは「双曲放物面に近いねじれ面」が適切な表現であろう。





森ビル補足②:「風速が規定を超過した場合、安全のために閉園措置を取る」(当日配布資料より)
なるほど。ガラスの壁が下からせりあがってくるといった大仕掛けがあるわけではなく、安全重視で閉じる、ということのようだ。




デッキは全て構造体となります。構造部材を溶接で一体化させる「折板箱桁構造」でできたスチール製の橋梁となります。
・構造原理(モーメント図)に従い、スパン中央で構造高を確保しています(通常の橋梁は、端部~中央部も含めて、部材厚さが同じものがほとんどです)。
・構造材が仕上げ材を兼ねる、意匠と構造が一体となった部材構成です。二次部材の化粧パネルが不要となる為、その結果、桁高を抑えることが出来、桁下空間の明るさを確保しています。
→また化粧パネルが国道へ落下するリスクがなく、道路上の安全性にも配慮しています。
おお、これはかなり攻めてる。今度は行ったらもっとじっくり見てみよう。





と、緩いリポートで恐縮だが、こんな感じだった。
そして、森ビルのもう1つの目玉、「麻布台ヒルズ」↓は11月24日開業予定だ。

そちらをじっくり見てから、「今どきの巨大建築」について改めて考えたい。(宮沢洋)