可動とは思えないアルミルーバーはさすが谷口吉生氏、新作「富山新聞高岡会館」を見た!

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 過去にも公言しているが、筆者(宮沢)は谷口吉生建築のファンである。1937年生まれで今年86歳の谷口氏の新作、「富山新聞高岡会館」を富山県高岡市まで見に行ってきた。

(写真:特記以外は宮沢洋)

 富山新聞高岡会館は、富山新聞社とカルチャーセンターなどから成る複合施設。敷地は前田利長ゆかりの古城公園の隣地(高岡市広小路)だ。旧ビルの隣接地に建設され、2022年9月に稼働を開始。既存ビルを解体して駐車場とし、富山新聞創刊100年の節目となる今春、全面稼働となった。

左手前に旧ビルが立っていた

富山新聞高岡会館
規模:3611㎡
構造:鉄筋コンクリート一部鉄骨造、地上5階建て
設計:谷口建築設計研究所
監理:谷口吉生

施工:清水建設 (いずれもパンフレットより)

  筆者は知らなかったのだが、「富山新聞」と「北國新聞」は兄弟紙で、ともに金沢に本社を置く北國新聞社が発行の母体だ。2023年が富山新聞創刊100年、北國新聞創刊130年の大きな節目となることから、飛田秀一会長(1942年生まれ)が金沢ゆかりの谷口氏に設計を依頼したのだという。

2021年11月に谷口吉郎・吉生記念金沢建築館を訪れた際の谷口吉生氏(写真右)

 筆者はこのプロジェクトのことを、2021年の谷口吉郎・吉生記念金沢建築館での展覧会の際に、谷口氏から直接聞いた。

ラウンジを介して古城公園と連続する水庭

 では中に入ろう。

 1〜2階の吹き抜けはガラス張りのコリドー。

 コリドーの階段を上ると、ゆったりとしたラウンジがあり、東側に水庭が広がる。谷口吉郎・吉生記念金沢建築館の水盤を思い出させるが、こちら(高岡)は東側の景色を切るために、コンクリートと耐候性鋼板の壁が立つ。

 谷口氏は、「建物内の1階から2階につながる階段のあるコリドーの吹き抜けでは、古城公園の景観、2階のラウンジからの水庭、東の空へと抜けてゆく連続した広がりが感じられます」(パンフレットより)と説明している。

千本格子をイメージしたルーバー

 「富山新聞高岡会館」という名称からは、新聞社のオフィスを想像するが、オフィスだけでなく、富山新聞文化センターの教室やバレエスタジオなどを備え、市民が集う場となっている。

 2〜6階の正面外壁(西側)を覆うルーバーは、「高岡の歴史的な千本格子をイメージした」という。実はこのルーバーは、自動で可動するアルミルーバー。太陽の動きに合わせて日射を遮り間接光を室内に取り込むようにプログラムされ、自動で動く。

 このルーバーは午後に動くため、午前中に訪れた筆者は残念ながら動く様子を見ることはできなかった。。

夕方の写真をお借りした。かなりしっかりと閉じる(写真提供:富山新聞)

 言われなければ「可動」とは思えない、シャープなルーバーのデザインはさすが谷口氏。筆者の知る限り、谷口建築での可動ルーバーは初めてと思われ、80歳を過ぎて未経験の技術にチャレンジするのは本当にすごいなと思う。

 1階と2階のラウンジまでは、誰でも見ることができる(ただし日曜は閉館)。古城公園側の緑は桜なので、筆者も春の午後に再訪してみたくなった。(宮沢洋)

夜景(写真提供:富山新聞)