重文・中之島図書館で宮沢の原画展開幕、三方から光が入る野口孫市の設計思想を生かす

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 なんだかすごい見出しになってしまったが、嘘ではない。国指定重要文化財である大阪府立中之島図書館3階展示室で、10月18日(水)から「イラスト名建築ぶらり旅・原画展」が始まった。日建グループnote連載の「イラスト名建築ぶらり旅」と書籍『はじめてのヘリテージ建築~絵で読む「生きた名建築」の魅力』に掲載された宮沢洋(この記事の筆者)によるイラスト原画を展示している。

旅の相棒、西澤崇雄さん(日建設計ヘリテージビジネスラボ)と宮沢の似顔絵ボードがお出迎え(写真:宮沢洋、以下も)
中之島の歴史の証人、1904年竣工。1922年に両翼を増築

 6月に日建設計東京ビルで開催された原画展の巡回展である(東京展の記事は下記)。

書籍『はじめてのヘリテージ建築』発刊、原画展@日建設計東京ビルは廃材活用の「宙に浮く展示」が見所

 書籍で掲載している20件の建物の中に中之島図書館があり、ぜひ原画展を、と声が掛かった。展示会場の「3階展示室」は重文である中之島図書館の中でも、野口孫市(住友臨時建築部(日建設計の前身)の初代設計技師)の設計により1904年(明治37年)、一番最初に完成した部分である。そんなところで個展をやっていただけるなんて、この先あるとは思えない。

 個展といっても、今回も半分以上は日建設計の若手チームの会場構成の力だ。東京展同様、「つな木」を仮設の展示台として使っている。

 ちょうど大阪で用事があったので、会期初日に行ってきた。第一印象は「明るい」! 筆者は以前にもこの部屋での資料展示を見たことがあるが、ブラインドを下げていてもっと「普通」の部屋だった。本展は「つな木」の圧迫感がないということと、原画の固定方法のラフさがこの明るさを生み出している。おそらく、通常の画家は「原画展示」でこんな止め方と自然光の入り方は許さない。これは原画の作者である筆者が、「別にどう展示してもらっても構いませんよ。一番いい形で使ってください」と言ったからである。

 別に自分の度量が大きいとか言いたいわけではないが、この展示体験はかなり貴重だと思う。自然光の明るい部屋で原画を見る(時間によっては作品に直射光が当たる)。多分、建築家ならば一度はやってみたい状況が実現している。さらに言うと、この展示は野口孫市が目指した3方向から自然光が入る閲覧室という状況を想像するのにも絶好の機会だ。当初の設計思想が輝いて見えて、雲の上の野口孫市も喜んでいると思う。展示構成の若手チームの皆さん、ご苦労さまでした。

原画の裏が見えるのが展示チームのこだわり
写真撮影もOK。撮っている人が多かった。でも本も買ってほしい(笑)
書籍の見本もパラパラ見てください
つな木の設営作業の動画も面白い

 会期は11月17日(金)までの1か月間。筆者は17時までかと勘違いしていて、本来の用事の後に慌てて見に行ったのだが、なんと月〜金は20時までやっているのだという。すごいな中之島図書館。だから、仕事帰りでも見られる(ただし土曜は17時まで)。もちろん無料なので、近くに用事がある人はぜひのぞいてみてほしい。日曜日は本来休みだが、イケフェス期間の10月29日(日) は開館している(つまり28日、29日とも開館。ただし17時まで)。

 宮沢のネームバリューで3階まで人が上がるのだろうかと心配していたのだが、結構な人が見にきていて、安心した。

 「イラスト名建築ぶらり旅」で取り上げた施設の皆さん、そちらでも原画展を開催しませんか? 意外に集客力ありますよ。イラストの力ではなく、野口孫市の「上らずにはいられない」階段の力かもしれませんけれど。(宮沢洋)

展示室は階段を上って右手

■展覧会概要
イラスト名建築ぶらり旅・原画展

日建グループnote連載の「イラスト名建築ぶらり旅」と書籍『はじめてのヘリテージ建築~絵で読む「生きた名建築」の魅力』に掲載された画文家・宮沢洋氏によるイラスト原画展を開催します。中之島図書館など、古い名建築と暮らす豊かなライフスタイルを伝えます。

期間:10月18日(水)~11月17日(金)
入場料:無料 
会場:大阪府立中之島図書館 3階展示室 
時間:月曜日~金曜日9:00~20:00、 土曜日9:00~17:00
休館日:日曜日・祝日、ただし 10月29日(日) は 開館 10:00~17:00
主催:大阪府立中之島図書館 指定管理者 ShoPro・長谷工・TRC共同事業体
共催:株式会社 日建設計

https://www.nakanoshima-library.jp/event/event-1452