日曜コラム洋々亭57:佐藤武夫の「旧旭川市庁舎」崖っぷち、12月17日(日)に「最後の思い出」見学会を開催

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 「旭川市庁舎、3年後には解体か」という記事を書いてから、ちょうど3年たった。

隣に建った新庁舎からこんな写真が撮れるようになった。と、喜んではいられない…(写真:宮沢洋)

 3年前に書いた記事はこれ↓だ。

 北側に建設された新庁舎が11月から共用を開始した。新庁舎の設計は久米設計を中心とするJV(久米・柴滝・中原共同企業体)。地上9階建てなので、旧庁舎(地上9階)と高さはそれほど変わらない。

 旧庁舎は佐藤武夫の設計により1958年に完成。1959年の日本建築学会賞を受賞。2003年にDOCOMOMO JAPANが 「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選んだ。

 まずは、外から見たビフォーアフター。

ビフォー(2020年11月)
アフター(2023年11月)
ビフォー(2020年11月)
アフター(2023年11月)
ビフォー(2020年11月)
アフター(2023年11月)

 筆者が訪れた11月21日には、まだ移転作業中のため旧庁舎は使用していた(移転完了した部分は閉鎖)。12月上旬までに移転は完了。遠からず、完全閉鎖となるようだ。

ビフォー(2020年11月)。この部分(1階吹き抜け)はすでに閉鎖されていた

解体し、跡地は駐車場に

 で、旧庁舎はこの後、どうなるのか。今年初めのNHKの報道によると…。

 「現在の庁舎(旧庁舎)はれんがとコンクリートを組み合わせたデザインが特徴で、昭和34年(1959年)に北海道で初めて日本建築学会賞を受賞するなど、文化的に価値があるとして保存を求める声もありますが、市は「保存のための費用を確保できない」として、解体したうえで跡地を駐車場にする方針です」(NHK北海道、2023年1月11日)

 10月26日の会見で、今津寛介市長はこう語っている。今津市長は2021年9月に初当選した1976年生まれの若い市長だ。

 「いよいよ来週11月2日の木曜日から、期間中の毎週末を6つのクールに分けて移転作業を実施してまいります。(中略)現庁舎の長い歴史に幕を閉じる訳ですが、12月17日に庁舎見学会、閉庁式を執り行いたいと思っています。1階、2階や普段入室する機会が少なかった応接室、議場にも入っていただけるようにして、1階のエレベーターホールの壁面や柱にお別れのメッセージをいただくなど、最後の思い出にしていただくような取組を考えています。詳細が決まりましたらお知らせをしたいと思います」(10月26日の市長定例会見より)

 「解体」という言葉は使っていないが、「最後の思い出」ということはそういう意味なのだろう。40代半ばの若いセンスでも、庁舎以外の利活用の道を探るという決断はできないものなのか…。機運が高まるまで「ほおっておく」というのも価値ある決断なのに。

 それと、見学会はいいと思うけれども、「1階のエレベーターホールの壁面や柱にお別れのメッセージをいただく」って余計に悲しくないか…。

ビフォー(2020年11月)

 とはいえ12月17日(日)の庁舎見学会、北海道の方はぜひ行ってほしい。そして、語り継がれるような“逆転の一手”を見つけてほしい。(宮沢洋)