越境連載「イラスト名建築ぶらり旅」09:三線三様の光る柱でオシャレに「脱・迷宮」──東京メトロ銀座駅

 仕事帰りに、東京メトロ銀座駅で地下鉄を乗り継ぐと、改札やホームの内装がガラッと変わっていた。2020年10月のことだ。ネットで調べてみると、ちょうどその日が新デザインのお披露目日だった。銀座線→日比谷線ホーム経由→丸ノ内線と地下鉄を乗り継いだ。気づいたのは、銀座線の改札階。あれ、柱が黄色く光ってる! 近寄ってみると、こんな模様だ。

(イラスト:宮沢洋)

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夏休み間近、中高生に読ませたい「隈研吾」と、小学生と読みたい「水族館」

 午前中に区営プールに泳ぎに行ったら、もう夏休みなのかと思うくらいたくさんの小学生が泳ぎに来ていた。確かにこれだけ猛暑日が続くと大人も子どもも気分は夏休みだ。そんな気分のなか、友人から先ほどこの写真を送ってもらい、書き忘れていた夏のネタを思い出した。

 書店に平積みされた夏休みの課題図書コーナーである(目黒の有隣堂にて撮影とのこと)。「サイがいなくなってしまう」ではなく、もっと左の方を見てほしい。

 「建築家になりたい君へ」(隈研吾著)である。表紙のイラストは、著者の隈さんのご指名で私が描いた。この本は河出書房新社から昨年の2月に発刊されたもの。私は表紙のイラストを描いただけなのであまり宣伝していなかったのだが、この本が第68回青少年読書感想文全国コンクール「高等学校の部」の課題図書に選定されたのである。

 私は高校時代に読書感想文全国コンクールなるものに応募したことがなかったので、「課題図書に選ばれた」という知らせを今年の春ごろに出版社からもらったときに、「ああ、良かったですね」くらいにしか思っていなかった。

 しかし、上の書店平置きの写真を見ると、これって建築界にとってもかなり意味のあることではないかと思い、ちゃんとお知らせすることにした。

 今回は「高等学校の部」の課題図書に選ばれたわけだが、隈さん自身は中学生を想定して書いたものである。なぜなら、河出書房新社の「14歳の世渡り術」というシリーズの第二弾だからだ(第一弾は「科学者になりたい君へ」佐藤勝彦著)。

私が出版社からいただいた初版

「M2」で知った「建築家は長距離走者」

 課題図書に選ばれるくらいだから、読みやすくて面白い。私が感心するのは、成功している建築家の人生訓なのに、「自慢臭さが極めて薄い」ということである。それは、そうだ。自分が高校時代に隈さんのプロフィルを見たら、「栄光学園→東京大学→建築家? オレは既に無理」と思う。そういうふうに他人事と思わせないように、要所に挫折体験がちりばめられている。

 中でも、「M2」(1991年)について回想する「建築家は長距離走者」というパートの書きっぷりは潔い。一部を引用するとこんな感じだ。

 僕もそうでしたが、若い頃は誰でも、早く有名になりたくて、人をびっくりさせるような建築を作ってみたいという気持ちになります。いわば短距離走のスタートに立ったような感じで、まわりを何も見ずに、猛ダッシュしてしまうのです。すると、すぐに息があがってしまいます。

 ほら、読みたくなるでしょう。なかなかこんなふうに、自分のことを引いては書けないものである。さすが。

 誰が読んでも面白いかは分からないが、建築関係を意識している中高生には薦めたい本である。別に増刷になっても私に印税が入るわけではない。これはピュアなお薦めである。

10歳から80歳まで面白がれる水族館ガイド

 ピュアではないお薦めも少々。まさに夏休み向けの1冊が7月下旬に発売となる。「イラストで読む建築 日本の水族館 五十三次」(青幻舎)。

 これは、私がOffice Bungaの仲間たちと書いたイラストガイドブックだ。青幻舎のサイトにある予告を引用すると…。

 これまで水族館は、建築家の晴れ舞台といえる美術館・博物館・図書館などに比べて、建築的視点で語られることは多くありませんでした。本書は、水族館が、大人から子どもまで幅広い世代が建築を体感し楽しむことができる、貴重な存在として注目し、最先端技術やさまざまな工夫までイラストとテキストでわかりやすく解説し、建築的魅力を伝えるものです。

 隈さんは14歳に向けて建築の面白さを書いたが、私は10歳から80歳まで面白がれるように「水族館建築」の奥深さを書いた。その詳細は、もう少し発行が近づいたら、改めてこのサイトで。(宮沢洋)

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「名護市庁舎」が更新検討の基礎調査を開始、「画文家」の自分にできること

 SNSでこの情報を見て「ウソだろう」と思った。だが、ネットで調べてみると、市のサイトに本当に載っていた。「名護市庁舎等更新検討に関する基礎調査業務委託に係る公募型プロポーザルの実施について※参加表明書類の提出は締め切りました」と書かれている。自分に何ができるかを考え、この記事とこのマークをつくってみた。

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夏の建築展03:早稲田の建築家展へ急げ、木製模型の情念が気づかせる建築家たちの真意

 弾丸建築展巡り3件目は、国立近現代建築資料館のある湯島から千代田線と東西線を乗り継いで早稲田へ。私(宮沢)の母校、早稲田大学早稲田キャンパスにある「會津八一記念博物館」で開催中の「早稲田建築 草創期の建築家展」だ。会期は6月2日〜7月15日。すでに半分が過ぎてしまったので、すぐに予定表に書き込んだ方がいい。この展覧会は早稲田関係者はもちろん、“普通に建築が好き”な人にとってもきっと面白い。

(写真:宮沢洋)
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夏の建築展02:「情熱と現実の間」に悩んだメタボリストの記録、「こどもの国」のデザイン展@ 国立近現代建築資料館

 「SUEP.展」を乃木坂のTOTOギャラリー・間で見た後は、千代田線で東に15分ほどの湯島駅へ。駅から5分ほど歩くと、湯島天神の向かいにある「国立近現代建築資料館」(湯島地方合同庁舎内)に着く。ここでは“一般の人にもとっつきやすい”SUEP.展とは対照的な“建築好きですら受け取り方に悩む”展覧会が行われている。6月21日に始まった「『こどもの国』のデザイン ー 自然・未来・メタボリズム建築」展だ。

(写真:宮沢洋)
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夏の建築展01:ギャラ間のSUEP.(スープ)展は「エシカルな建築」を社会に発信するのに最適

 6月に入ってから都内で始まった3つの建築展をリポートする。いずれも内覧会や初日が出張と重なってしまい、既に他メディアで報道されているものもある。悔しい……。なので、得意の弾丸ツアー形式で、3件を効率的かつオーバーレイ的に見て回る。

(写真:宮沢洋)

 1件目は東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間(以下、ギャラ間)で6月8日から始まったSUEP.(スープ)の展覧会「Harvest in Architecture 自然を受け入れるかたち」だ。SUEP.は末光弘和氏と末光陽子氏が共同主宰する設計事務所。私は、この人たちが登場してから、食べ物のスープのつづりがいつも分からなくなり、その度に調べている(答えは「Soup」)。

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越境連載「建築シネドラ探訪」22:松坂桃李が演じる車いす建築家がリアル。恋愛より気づきのドラマ「パーフェクトワールド」

 以前、このコラムで田村正和、木村拓哉、宮沢りえが三角関係を演じるドラマ「協奏曲」を取り上げた。そのとき、「このドラマはもし『恋の駆け引き』がなかったとしたら、『建築家の師弟のドラマ』として、かなりのリアリティー感を持って記憶されただろう」と書いた。今回取り上げる「パーフェクトワールド」もそれと同様、「もう少し恋の駆け引きが薄目だったら…」と思わずにいられないドラマである。

(イラスト:宮沢洋)

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【追加写真あり】“名古屋シン木造御三家”弾丸ツアー、「ささしま高架下オフィス」は木造の選択に大納得

この記事をご覧になったタマディック(3番目に紹介)の広報の方から「建物内の写真を載せてもOK」と連絡があったので、1階エントランスホールの写真を追加した。(本文の青字部は2022年6月16日に加筆、黒字部は 2022年6月10日公開)

坂茂建築設計が設計した「タマディック名古屋ビル」 の1階エントランスホール(写真:宮沢洋)

 私(宮沢)が前職の日経アーキテクチュア編集部にいた頃には、「名古屋」×「木造」で思い浮かぶのは、河村たかし名古屋市長がぶち上げた「名古屋城天守木造再建計画」くらいだった。名古屋は木造とは縁遠い印象の都市だった。それがここ1年ほどの間に急変。立て続けに話題の木の建築3件が完成した。実際に見て回ると、どれも面白く、「これまでの木造のイメージを打ち破る」という意味で、私はこれらを“名古屋シン木造御三家”と名付けたい。なお、最初に言っておくが、すべてが構造上の木造というわけではない。

まずは新幹線高架下の木造オフィスへ

(写真:宮沢洋、以下も)
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風前の灯の坂倉準三「羽島市庁舎」、民間提案募集が「あるかも」と聞き、勝手に提案

 坂倉準三が設計した三重県の伊賀市旧庁舎(旧上野市庁舎)が「MARU。architecture」の設計で再生されるかもしれない、という記事を書いた(こちら)。それを書いていたら、坂倉の生まれ故郷、岐阜県羽島市にある「羽島市庁舎」(1959年竣工)の“最後の姿”を見たくなり、名古屋出張のついでに行ってきた。

(特記以外の写真:宮沢洋、2022年6月8日撮影)
左が新庁舎。2021年11月から供用を開始した
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越境連載「建築シネドラ探訪」21:映画「私の頭の中の消しゴム」、大ヒットの要因は“最強にモテる”建築家像

 この映画、私は勝手に“韓流3大建築家ラブストーリー”の1つと位置付けている。3大というのは、誰もが知る韓流ドラマ「冬のソナタ」、本連載でも取り上げた映画「建築学概論」、そして今回取り上げる映画「私の頭の中の消しゴム」だ。

(イラスト:宮沢洋)

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