北陸新幹線延伸・建築の旅(後編):福井駅→敦賀駅では隈研吾氏や内藤廣氏に加え、“江戸のギーガー”も必見

 「北陸新幹線延伸エリアの注目建築」を紹介する企画の後編は、福井駅から西に向かう。

後編のゴールはここ。2つの建築、両方分かりますか?(写真:宮沢洋)
『鉄道・運輸機構だより』2024冬季号より(イラスト:宮沢洋、以下も)
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北陸新幹線延伸・建築の旅(前編):小松駅→芦原温泉駅周辺の注目建築を一気に巡る

 北陸新幹線が3月16日(土)、金沢から敦賀まで延伸されて開通する。筆者(宮沢)はこれに先立ち、JRTT(独立行政法人鉄道・運輸機構)が発行している広報誌『鉄道・運輸機構だより』(季刊)の2024冬季号で、延伸された北陸新幹線の6駅をイラストでリポートした。本サイトでは、この仕事のついでに見たり、以前に見たりした「延伸エリアの注目建築」を紹介したい。

前編のイチオシは谷口吉生氏が設計した「片山津温泉総湯」(写真:宮沢洋)
『鉄道・運輸機構だより』2024冬季号より(イラスト:宮沢洋、以下も)

(駅そのものについては元の記事を読んでほしい。PDF版→「画文家 宮沢洋が巡る 北陸新幹線(金沢・敦賀間)新駅図鑑」

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丹下健三の無念を晴らす横浜美術館の可動ルーバー復活、乾久美子氏によるリニューアルは折り返し点

 大規模改修工事のため2021年3月から休館していた横浜美術館(設計:丹下健三)が3月15日、「第8回横浜トリエンナーレ」の開幕に合わせてリニューアルオープンする。本サイトの連載「よくみる、小さな風景」でおなじみの乾久美子氏がリニューアルに関わっている。

まるで別の建築のよう(写真:宮沢洋)
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倉方俊輔連載「ポストモダニズムの歴史」16:渡辺豊和「仮面劇の建築化」から石井和紘「表面性とは装い」へ

後述する石井和紘「ゲイブルビル」1980年(左の写真)とフィリップ・ジョンソン「AT&Tビル」(1984年)(写真:2点とも倉方俊輔)

 渡辺豊和が「仮面劇の建築化」という言葉を書いたのは、1976年の「中内邸」発表に際してだった。この手法に依拠することで「1½吉岡邸以後の久方ぶりの設計であったせいもあって〈中略〉また違った方法を探り出せるのではないかという密かな期待があった」と、前作との違いに触れている(注1)。

 確かに、前作の「1½吉岡邸」(1974年)は、まるで表面的ではなかった。これは住宅と診療所からなる建築で、住宅部分は正方形の平面の上に半球形のドームが載っている。診療所は、それを半分に切った形態で、この「1」と「½」とが渡り廊下で接続されている。しかし、前面道路から奥の住宅部分に行くには、いったん診療所の地下に下り、そこから階段で上がらなくてはいけない。すると、眼の前には、ドームがつくる空間の中心に鎮座する屋根付きの和室が現れるといった仕掛けである。

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愛の名住宅図鑑07 :「本野精吾自邸」(1924年)、深い軒が守った。築100年のコンクリートブロック住宅

 今回から日本におけるモダニズム住宅の話に入りたい。まず取り上げるのは、建築家で京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)の教授であった本野精吾(もとのせいご、1882~1944年)。

 本野精吾? 誰それ? そんな声が聞こえてきそうだ。

(イラスト:宮沢洋)

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表参道で稲山正弘氏の東大退官記念展、21世紀の木造デザインの歴史がここに!

 「木を建てる – 稲山正弘展 東京大学退官記念展」が東京・表参道の「ギャラリー5610」で3月5日から始まった。会期は3月17日まで。開幕2日目に行ってきた。

屋外で出迎えるのは稲山研究室の学生たちがかつて東大・五月祭でセルフビルドした木質パビリオン「カラメンアーチ」の復刻版
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高架下建築図鑑02:3つの高架下空間を一体再生した「日比谷OKUROJI」、建築が背景に徹する/画:遠藤慧

「高架下建築図鑑」は鮮やかな水彩イラストが人気の遠藤慧さんとともに、高架下建築の魅力と奥深さをひもとく連載だ。2回目は、JR有楽町駅と新橋駅の間の高架下に2020年9月に開業した商業施設「日比谷OKUROJI(オクロジ)」を訪れた。

【取材協力:ジェイアール東日本都市開発】

3世代の高架橋が並立、それぞれの歴史が伝わるように

 日比谷・銀座・有楽町・新橋という4つの繁華街の結節点に位置する「日比谷OKUROJI」。全長は約300mで、その中央を天井の高い共用通路が貫く。通路を歩くと奥まで長く真っ直ぐに視線が抜け、傍らに歴史ある煉瓦アーチも続く。この空間体験は数ある高架下空間のなかでも得難いものだ。

(画:遠藤慧、以下の3点も)
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祝プリツカー賞、私が見た山本理顕氏の“思わず声が出る”すごい建築

 山本理顕氏が「建築界のノーベル賞」とも呼ばれるプリツカー賞を受賞したニュースが世の中を駆け巡っている。「建築の面白さを一般に伝える」というテーマで活動している自分(宮沢)としては、山本氏の受賞もうれしいが、こんなに建築の話題を一般メディアが取り上げることに涙が出そうになる。(昨晩のTBS「ニュース23」では23時半ごろから5分間くらい山本氏の話題だった)

坂牛卓氏著『建築家の基点』(彰国社、2022年)の表紙に描いた山本理顕氏の似顔絵(イラスト:宮沢洋)

 何度見ても(あるいは読んでも)うれしいニュースなのだが、山本氏の業績が「コミュニティ」とか「交流」とか「家族」とか、プログラム面ばかりで語られるのがちょっと気になった。山本氏の著作にもそういうタイトルが多いので間違ってはいない。でも、山本氏の建築をけっこう見てきた筆者(宮沢)としては、「もっとデザインのことを語れよ」と言いたくなるのである。

 とはいえ、正面から山本氏のデザインを論じるには1年くらいの準備期間が必要なので、ここでは筆者が特に強く感じるデザイン的特質について触れたい。あまり実物を見たことがないだろう建築を2つ選んだ。いずれも実物を見ると、目が点になる。

(写真:宮沢洋、以下も)

 1つはこれ↑。「公立はこだて未来大学」(2001年)。函館市のはずれの方にあるので、観光で函館に行ってもなかなか行きづらい。

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“早すぎた天才” シドニーで開催された葉祥栄展の拡大帰国展が福岡アジア美術館で3月7日~12日に開催

 建築家・葉祥栄(1940年~)の代表的な建築を紹介する展覧会「Revisiting Shoei Yoh 葉祥栄再訪」が、福岡アジア美術館8F交流ギャラリーで3月7日から3月12日まで開催される。入場無料。

代表作の1つ「小国ドーム」(1988年)(写真:宮沢洋)
展覧会のポスター
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吉阪隆正の旧江津市庁舎、「公共施設を断念し民間譲渡へ」という市長判断が悪くないと思える理由

 江津市の中村中市長は2月28日、江津市の旧本庁舎(1962年竣工、設計:吉阪隆正)について、公共施設としての利用を断念し、民間譲渡を最優先とする方針を公表した。

旧江津市庁舎(写真:特記以外は宮沢洋)

 2023年1月末に有識者会議が提出した「建物を再利用する方向で検討を深めるべき」とする報告書を覆した形だ。えーっ、何のための有識者会議? そんな声が聞こえてきそうだ。だが、民間への「譲渡」という方法は、公共建築再生の新たな選択肢を示すものとして悪くないと筆者は思う。

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